7―終わりに
この1年で、LNGの輸入を巡る世界の情勢は激変し、その調達は困難さを増している。
主要産出国の一つである豪州は、国内ガス供給不足を理由にLNGの輸出規制の検討が取り沙汰された(今回輸出規制は回避)。ロシアのサハリン2についても、現状、日本側の権益は維持され、取引条件も従前どおりとなった模様だが、今後も注視が必要だ。こうした中で、日本とカタールの関係はこれまで以上に重要と言える。
エネルギー資源としてのLNGも、その役割は重要度を増している。天然ガスは化石燃料の中では最も温室効果ガスの排出量が少なく、脱炭素への移行期の燃料として注目を浴びている。
日本では、2022年、3月に経済産業省が電力需給逼迫警報*25を発令する等、電力予備率が危機的状況に陥った。政府は少額のポイントを梃子に、一般家庭にも節電を呼びかける。大口需要企業への都市ガス使用制限令に関する法整備や、事業者間のLNG融通を経産省が仲介する等の試みも検討されている。
電力事情が更に深刻になると予想されるこの冬は、折しも、カタールでのFIFAワールドカップの一次リーグが終了し、決勝トーナメントに入る時期と重なり*26、世界中の関心がカタールに向かうことになる。このレポートを通じて、カタールがサッカー以上に、我が国の国民生活に大きく関係している重要な国であることを、読者の皆様の心に留めていただければ幸いである。
*25:東京電力ホールディングス、東北電力管内。なお、6月下旬にも東電管内で電力需給逼迫注意報が発令された。電力逼迫注意報は、予備率(電力供給余力)が3%を下回ると予想される際に発出。注意報は同じく5%の場合。
*26:2022年12月3日より決勝トーナメント開始予定。