潜在記憶は自分の後押しをしてくれる
要するに、プライミング効果とは、あらかじめ特定の情報を何度も見たり聞いたり、また、その情報について考えたり想像したりすることによって、頭の中に潜在記憶が刻まれ、あとになって情報選択や意思決定、または行動に影響を及ぼすということです。そこで、この効果を目標達成にも利用しようというわけです。
利用するのは、脳が現実と想像のギャップを埋めようとしてくれる性質です。先程の昼食のメニュー決定の例では、前日の夜、脳がテレビを観て「△△が美味しそうだ」という情報をインプットしたわけです。
そして、次の日の昼の時点で、実際にはまだそれを食べていない、つまり、実現していないということで、そのギャップを埋めようとしたのです。そこで、脳がテレビで観た食べ物をメニューに選ばせるように、意識に働きかけたのです。山田さんの場合は、テレビの食べ物の記憶を「資格試験の合格」の記憶にしてしまおうというわけです。
しかし、まだ合格は将来の話です。どうすれば合格の記憶を作れるのでしょうか。
脳はイメージの記憶を得意としています。想像力を駆使すれば、まだ実現していない将来の姿も頭の中にイメージを描くことができます。山田さんの場合は、自分が目当ての試験に合格して喜んでいる姿や、合格によってキャリアアップした自身の姿です。
イメージによって、事前に自分がこうしたいと思うものを脳に知らせることができれば、それが潜在記憶となります。脳は、まだ実現していないそのしたいこととのギャップを埋めようと、あるいは、実現に近づけようとします。そして、したいことに関係する情報が周りに出てきたら、そこに意識を注目させるように仕向けてくれるのです。
それはインターネットでの情報かもしれませんし、書店に行ったときの情報かもしれません。普段であれば素通りしてしまうところを、脳が「今、あなたに必要なのはその本ですよ」と、注意が向くように意識を操作してくれます。必要な情報が集まれば、それだけ実現には有利になるのは当然だと思いませんか。
また、試験に限らず、目標達成や何かを成功させるためには、間違いなく継続的な努力が必要になってきます。先程も述べたように、意志の力で自分を律するのはなかなかに大変なことです。
しかし、脳に潜在記憶を落とし込んでおければ、達成や成功のイメージが、実現のために今この努力が必要なのだと無意識のうちに教えてくれたり、後押ししてくれたりして、モチベーションの維持にもつながるのです。脳に意思を伝えるための言語がイメージなのです。
この話を聞いてから、山田さんはイメージングを忘れないように、いつも目に入る場所にある壁に、自分がガッツポーズしている写真を貼り付けたそうです。それを見るたびに、頭の中で合格の喜びをイメージしているそうです。さらにそれに加えて、布団に入って寝る直前にも、合格から展開する人生を映画を観るように想像しているとのことです。
池田 義博
記憶力日本選手権大会最多優勝者(6回)
世界記憶力グランドマスター
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