(※写真はイメージです/PIXTA)

五大商社に勤務後、公益財団法人日本サッカー協会へ転職、様々な交渉の場を経験してきた松永隆氏の著書『ビジネスパーソンのための超実践的交渉術 ⽇本⼈の交渉のやり⽅』より一部を抜粋・再編集し、松永氏が経験した「商社での飼料の取引」、および取引から学んだ「交渉に役立つ情報の引き出し方、晒し方」をみていきます。

[ひそかに]売り買いするための「情報交換」方法

[図表]のように、ありとあらゆる関係先と情報交換しながら今後の相場の動きを占うための情報を収集します。

 

情報を得るにはギブ&テイクなのでこちらもそれなりの情報を出さなくてはなりませんが、相手によって与えてはいけない情報もありますので気をつける必要があります。特に自分が買い持ちか売り持ち越しかどちらのポジションにいるのかは話してはなりませんし、感づかれてもいいことはありません。

 

〈南米の原料メーカーとのやり取り〉

 

こちらが知りたいのは需給関係に影響するような情報です。南米の大手の原料メーカーはどのぐらいのペースで生産し、どのぐらいの在庫を抱えていて、どれぐらいものを売って在庫を軽くしたいのかなどです。

 

南米の原料メーカーは自社のことはあまり話してくれませんが、逆に競合する他の原料メーカーの話は驚くほど話してくれます。あるいは競合の日本の輸入業者がどのような動きをしているのかなども聞けることがあり、これも貴重な情報です。

 

そのような情報を得るために私から南米のメーカーには日本側の需給の見通しをある程度提供します。彼らも生産、販売計画を立てるのにそのような情報は欲しがるのです。

 

例えばただ、私自身が自分が大幅に売り越しているのを南米の原料メーカーに感づかれたら、そのメーカーから買い付けようとする際、相手は必ずこちらの足元をみて値段を吊り上げようとしてきます。またそのメーカーがその情報を仲間の原料メーカーに話すかもしれません。そうなるとどの原料メーカーからも足元を見られることになりかねません。

 

国内に目を向けると配合飼料メーカーはほぼ四半期ごとに原料を手当てしていくので、どのメーカーがいつ頃買いに入るのかなども知りたいところです。これはメーカーの買い付け担当者や問屋の担当者から情報収集します。ギブ&テイクなのでこちらは産地側の生産状況、在庫状況、今後値動きはどうなると思うかなどの情報を提供していきます。

 

この場合も自分が現在売り越し持ちか買い持ちどちらのポジションか感づかれてはなりません。聞かれても「今のところスクウェア(買い持ちもゼロ、売り越しもゼロ)です」と明るく答えるのが模範解答回答です。

 

表情や声色で買い持ちしていると感づかれてしまうとその後どうしても買いたたかれ気味になります。「早く売って楽になった方ほうがいいんじゃないの?」と交渉の過程で突っ込まれ、揺さぶられます。

 

但し、いつも情報を出し惜しみしていると「あいつと話しても何も話し教えててくれないしな……」というレッテルを貼られ、逆に有益な情報をもらえなくなるのです。

 

要は晒していい情報は思いっきり晒して、お客様さんに「そうだ、彼に電話して聞いてみよう」と思ってもらわないといけません。そうすることによって売り上げも増えますし、逆に新たな情報を仕入れることになったりするのです。

 

ここら辺の情報を巡る微妙な駆け引きが若かった私にとっては物凄い訓練になったことは言うまでもありません。情報の引き出し方、晒し方を究極の実践の中で覚えていったのです。

次ページ「何を」「誰から」聞き出せるか?

※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『ビジネスパーソンのための超実践的交渉術 ⽇本⼈の交渉のやり⽅』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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