韓国との再統一、日本への復讐、そして
■EMP攻撃シナリオ
プライ博士は、2020年6月18日の論考のなかで、「(世界は武漢ウイルスで右往左往している場合ではない。というのも、)中国は長年、EMP攻撃を計画してきた。中国のEMP攻撃こそ脅威なのだ」と主張している。
プライ博士の報告書「核EMP攻撃シナリオと諸兵種連合サイバー戦」は、EMP攻撃は現実的な脅威であり、中国やロシアの軍事教義(ドクトリン)の文書で公然と議論されていることを明らかにしている。例えば、ロシアのウラジミール・スリプチェンコ大将は2000年、彼の本『非接触戦争』(未訳)でEMPを使用するモスクワの意図を最初に開示している。
中国の軍事教義も同様であり、「コンピュータネットワークが攻撃を受けて破壊されるとすぐに、国家は麻痺状態に陥り、国民の生活は停止するだろう」「情報化時代の米国を含む西側諸国の軍事力に対抗し、EMP兵器を構築すべきだ」と主張している。
北朝鮮も、地下核実験に続いて、核EMP攻撃をおこなうと脅迫している。
プライ博士は、「情報システムとコンピュータ化された技術に依存するようになったため、米国はこの新しいタイプの戦争に対してとくに脆弱だ」「私たちの社会がもっとも技術的に進歩しており、したがってもっとも攻撃を受けやすい社会だ。驚くべきことは、私たちの敵がEMP攻撃を核戦争の行為とみなしていないことだ」と警告している。
■北朝鮮による日本と韓国に対するEMP攻撃シナリオ
北朝鮮はICBM(または衛星)によって米国をEMP攻撃することが可能であり、北朝鮮の中距離弾道ミサイル(IRBM)またはノドンのような準中距離弾道ミサイル(MRBM)によって日本、グアム、フィリピンを、そして短距離弾道ミサイル(SRBM)によって韓国をEMP攻撃することが可能である。
プライ博士は、報告書「核EMP攻撃シナリオと諸兵種連合サイバー戦」で、中国や北朝鮮によるEMP攻撃シナリオを発表しているが、ここでは、北朝鮮の日本に対するEMP攻撃シナリオを紹介する。
このシナリオでは、北朝鮮が日本にEMP攻撃をおこなって、日本への復讐、世界に北朝鮮を大国として認識させるというふたつのもっとも重要な外交政策目標を達成するという想定がなされている。
北朝鮮のEMP攻撃シナリオのひとつでは、北朝鮮が日本と韓国にEMP攻撃をおこなって、韓国との再統一、日本への復讐、世界に北朝鮮を大国として認識させるという3つのもっとも重要な外交政策目標を達成するという想定がなされている。
韓国の征服は北朝鮮の政治軍事指導者の宿願であり、北朝鮮の存在の主な理由だ。 北朝鮮の生産と活動のほとんどは、強制と力によって韓国との統一を達成するための準備にむけられる。
第二次世界大戦中の日本の朝鮮占領に対する復讐は、北朝鮮のメディアと政府の声明で毎日扱われているテーマだ。北朝鮮が韓国を征服するためには日本との戦争が必要なのだ。というのも北朝鮮は、朝鮮戦争の経験から、日本が米国と韓国を守る同盟軍にとって不可欠な準備地域であったため、日本との戦争が必要だと認識しているからだ。
北朝鮮は自らが世界の大国であることを証明するために、国際法を無視して核ミサイルをテストし、配備している。北朝鮮の戦略は、核戦争の恐怖を高め、米国とその同盟国を従属させるために、「核による恫喝」を通じて韓国と日本に対する米国の安全保障協力関係を断つことだ。
渡部 悦和
前・富士通システム統合研究所安全保障研究所長
元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー
元陸上自衛隊東部方面総監
↓コチラも読まれています
ハーバード大学が運用で大成功!「オルタナティブ投資」は何が凄いのか
富裕層向け「J-ARC」新築RC造マンションが高い資産価値を維持する理由