ミサイル実験を軽視しすぎ?核より怖い北朝鮮の電磁パルス攻撃 (※写真はイメージです/PIXTA)

北朝鮮がロシアの技術を利用してEMP(Electromagnetic Pulse)兵器をすでに完成させているという報告書が発表されました。北朝鮮のEMP攻撃シナリオとは。元・陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏が著書『日本はすでに戦時下にある すべての領域が戦場になる「全領域戦」のリアル』(ワニプラス)で解説します。

プライ博士の報告書「北朝鮮EMPの脅威」

プライ博士が2021年6月に発表した報告書「北朝鮮:EMPの脅威 北朝鮮のEMP攻撃能力」の主要点を以下に紹介する。

 

電磁パルス(EMP:Electromagnetic Pulse)攻撃とは、核爆発などにより強力な電磁波(ガンマ線など)を発生させることで、電子機器に過負荷をかけ、誤作動を発生させ、破壊することを目的とした攻撃である。EMP攻撃は、パソコン、電車、飛行機、自動車、電力網、通信網、衛星通信、電気制御された水道やガスのインフラなど、対象地域のすべての電子機器に致命的な打撃をもたらす。

 

■北朝鮮はロシアの技術を使って「スーパーEMP弾」の開発を完了した

 

北朝鮮はすでにロシアの技術を使った「スーパーEMP弾」の開発を完了した。スーパーEMP弾は、高レベルのガンマ線を発生させる数キロトン程度の小型・軽量のEMP兵器だ。2004年、ロシアのスーパーEMP弾開発に関与したふたりの将軍が「ロシアのスーパーEMP弾の技術が北朝鮮に流れた。北朝鮮が数年以内にそれを完成する可能性が高い」と警告したが、その警告は現実のものになった。

 

2006年、北朝鮮はスーパーEMP弾と思われる装置の最初の核実験をおこなった。この装置の爆発力は約1~2キロトンと非常に低かったため、ほとんどの専門家は、この核実験は失敗であると一蹴した。しかし、その核爆発はスーパーEMP弾の実験だったのだ。

 

2009年には、2回目の北朝鮮の核実験がおこなわれたが、韓国では6~9キロトンと推定していて、スーパーEMP弾の爆発力と一致している。

 

2013年2月12日におこなわれた3回目の北朝鮮の核実験も、韓国では6~9キロトンと推定された低爆発力で、これもまたスーパーEMP弾と一致している。

 

2011年には、ロナルド・バージェス米国国防情報局長官が上院軍事委員会で、北朝鮮は弾道ミサイルに搭載する核兵器の弾頭化に成功したと証言した。これにより、北朝鮮の小規模な核実験が実際には成功であったことが確認された。

 

ジェームズ・ウルジー元中央情報局(CIA)長官も2014年の議会報告書で、〈ロシアが2004年から北朝鮮のEMP弾開発を支援した。〉と指摘している。

 

また、北朝鮮の『労働新聞』は2017年9月、金正恩国務委員長が核兵器研究所を訪問し、「戦略的な目的で、高高度で爆発させて広大な地域に影響を与えるスーパーEMP攻撃をおこなうことができる」と発言したと報じている。

 

以上の一連の証言や報道により、北朝鮮がロシアのスーパーEMP弾をコピーしたEMP兵器を完成させたことは明らかだ。

 

■西側は北朝鮮の核ミサイルの実験やEMPの脅威を軽視してきた

 

2012年12月12日の衛星「光明星3号」の発射と周回の成功によって示されるように、北朝鮮は核兵器を米国に届けることができる。これに対し、北朝鮮の脅威、例えば北朝鮮がミサイル発射のために弾頭を小型化することや、米国に深刻な核の脅威をもたらすのに十分正確なミサイルを開発することには、まだ数年かかるという見解がマスコミや政策立案者の間で広まっている。

 

しかし、北朝鮮は2017年夏、米国のすべての都市を標的にできる大陸間弾道ミサイル(ICBM)および水素爆弾の開発を実証して世界を驚かせた。北朝鮮は現在、米国にとって致命的な核の脅威だ。先述のように彼らは、一撃で米国に甚大な被害を与える特別な種類の核兵器(スーパーEMP兵器)をもっているのだ。

 

米国情報機関のアナリストは2017年、北朝鮮の核兵器の推定数を大幅に上方修正して約20から60であるとし、北朝鮮はミサイル発射用の弾頭を小型化できると結論付けた。

 

韓国当局は2017年4月30日、「北朝鮮による4月29日の中距離ミサイル発射実験は、高度72㎞で意図的に爆発させたものであり、世界的に報道されているような失敗ではない」と述べ、スーパーEMP兵器の実験であったことを示唆した。

 

北朝鮮は2017年9月3日、6回目の地下核爆発実験の間に、ほかの水素爆弾の実験をしたと主張したが、その爆発力は約250キロ〜328キロトンだとされ、これは広島原爆の約25倍の威力である。北朝鮮の国営メディアは、「2017年9月の水素爆弾はスーパーEMP弾であり、数十キロトンから数百キロトンまで爆発力を調整できる」と報じている。

 

北朝鮮はまた、2017年9月の水爆実験の直後に、スーパーEMP兵器を正確に記述した技術報告書「核兵器のEMPの力」も発表している。

 

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    前・富士通システム統合研究所安全保障研究所長
    元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー
    元陸上自衛隊東部方面総監

    1978(昭和53)年、東京大学卒業後、陸上自衛隊入隊。その後、外務省安全保障課出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、函館駐屯地司令、東京地方協力本部長、防衛研究所副所長、陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、陸上幕僚副長を経て2011(平成23)年に東部方面総監。2013年退職。著書に『米中戦争―そのとき日本は』(講談社現代新書)、『中国人民解放軍の全貌』(扶桑社新書)、『日本の有事』(ワニブックス【PLUS】新書)、共著に『台湾有事と日本の安全保障』『現代戦争論―超「超限戦」』(ともにワニブックス【PLUS】新書)がある。

    著者紹介

    連載日本はあらゆる領域が戦場になる戦時下である

    本連載は渡部悦和氏の著書『日本はすでに戦時下にある すべての領域が戦場になる「全領域戦」のリアル』(ワニプラス)より一部を抜粋し、再編集したものです。

    日本はすでに戦時下にある

    日本はすでに戦時下にある

    渡部 悦和

    ワニブックス

    中国、ロシア、北朝鮮といった民主主義陣営の国家と対立する独愛的な国家に囲まれる日本の安全保障をめぐる状況は、かつてないほどに厳しいものになっている。 そして、日本人が平和だと思っている今この時点でも、この国では…

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