「親の会社を継ぐこと」と「相続」の関係
中小企業の経営者の場合、事業に必要な資産を個人で保有しているケースがあります。その場合に発生する可能性があるのが、相続人の間のトラブルです。トラブルに発展する可能性や、事前にできる対策について確認しておきましょう。
相続人とトラブルになる可能性がある
経営者が個人名義で株式や事業所の不動産を持っている場合、経営者が死亡すると、これらの資産は法定相続分に従って承継されます。法定相続人が後継者1人のみであれば、問題はありません。
トラブルが発生する可能性があるのは、後継者以外にも法定相続人がいる場合です。後継者1人へ事業に関わる財産を集中させると、不公平感から相続トラブルに発展するかもしれません。
だからといって、経営に携わらない相続人が事業に関する資産を引き継ぐと、事業の運営に支障をきたす可能性があります。たとえば事業所の不動産を引き継いだ相続人が、第三者へ売却してしまうといったケースです。このようなトラブルを避けるためにも、経営者の生前に十分な準備をしておかなければいけません。
遺留分減殺請求の可能性とは
後継者へ事業用資産を全て引き継がせるという内容の遺言書があれば、経営に必要な資産を後継者へ集中させられます。ただしこの場合にも、他の相続人から『遺留分減殺請求』をされるかもしれません。
遺留分は、一定の範囲の相続人が最低限の遺産を受け取れる権利です。正式な遺言書を作成していたとしても、遺留分を請求される可能性はあります。これにより事業に支障をきたすかもしれません。
生前贈与で資産を引き継ぐ場合も同様です。経営者から後継者へ無償で資産を譲り渡す生前贈与なら、後継者に資金がなくても実現できます。しかし遺留分減殺請求の対象となる部分です。確実に後継者に引き継がせるには、時価で後継者へ売却する方法があります。
遺言書の作成、十分な説明などで対策を
後継者が決まっていたとしても、すぐに事業承継できるわけではありません。実際に引き継ぐまでには、10年ほどかかるケースもあります。それだけの期間があれば、経営者に万が一の事態が起こる可能性もあるでしょう。
資産の相続について何も対策をしていなければ、後継者を含む相続人の間にトラブルが発生するかもしれません。そこで事前に『遺言書』を作成しておくのが有効です。
家族間で相続について話す機会も設けておくとよいでしょう。あらかじめ今後の方向性について、経営者の口からじかに話しておけば、相続人も納得しやすくなるはずです。