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買収された会社の行く末は必ずしも悪いものではありません。買い手選びを慎重に行えば、これまでより待遇がよくなる可能性もあります。しかし買い手企業によっては、悪い方向へと進む場合も。みていきましょう。

買収された会社の末路はどうなる?

かつて敵対的買収が大きく取り上げられたことから、M&Aで買収された企業は苦しい立場に置かれるものという印象を抱いている人もいるかもしれません。近年増えている友好的買収では、想像するほど悪い事態に陥ることはないはずです。ただし、買い手選びを慎重に行うことがポイントといえます。

 

待遇の悪化で社員が辞めていく

M&Aを行うとき、売り手企業の社員が最も気になるのは『処遇』です。特に給料や福利厚生など、待遇の変化には敏感に反応します。雇用条件がこれまでより悪化するなら、退職者が出る可能性もあるでしょう。社員の今後を思い決断したM&Aで退職者が出てしまっては本末転倒です。場合によっては、M&Aの条件にも影響するかもしれません。中途半端な状態で伝えると、社員に動揺が走る可能性があります。条件が定まり十分な説明ができるようになってから、M&Aの実施を伝えることも大切です。

 

買い手選びが重要

社員の待遇は買い手によって異なります。譲渡は会社の経営権を譲り渡す行為です。M&A実施後に買い手がどのように社員を扱ったとしても、法律の範囲内であれば問題ありません。そのため『買い手選び』は慎重に行いましょう。社員が働き続けられる環境構築に尽力してくれる買い手かどうか、見極めるのがポイントです。

 

また良好な関係で交渉をするために、自社の状況を包み隠さず伝えましょう。M&Aの実施目的や今後の計画・考え方などを検討し、総合的に判断することが大切です。

基本的に社員は働き続けられる

買い手がM&Aを実施する目的の一つに、人材の確保があります。またM&Aによって社員を辞めさせるのは違法です。そのため社員は変わらず働き続けられます。ただし、さまざまな制度は買い手企業のものへ移行していきます。

 

人材の獲得はM&Aの目的として重要

人材の獲得は企業にとって重要なポイントです。新規事業を展開しようとM&Aを実施しても、そこで働く人がいなければ事業は稼働しません。そのため既に事業に関する経験や技術・ノウハウを持っている売り手の社員を、そのまま活用したいと希望する買い手は多いものです。採用活動や教育の必要がないため、ごく短期間で新規事業を軌道に乗せられます。社員そのものも売り手企業の資産と考えられるケースです。この場合、社員が退職することで企業の価値が低くなる可能性も考えられます。

 

■社員にとってのメリット

M&Aで会社や事業を買収する企業は、それだけの資金力がある優良企業と考えてよいでしょう。そのため、買収によって今より大きな企業になったり、傘下に入ったりすることが期待できます。

規模が大きな企業は中小企業と比較して安定しており、長く働き続けられるはずです。また待遇が買い手企業のものと同等にそろえられるため、給料アップも期待できます。社内の競争という面では、買収前より厳しさが増すかもしれません。ただし買い手企業では優秀な社員を育成し活用しようと考えるため、教育の機会が充実し、キャリアの幅が広がるでしょう。

 

M&Aを理由にリストラはできない

M&Aで買収されたとしても、それを理由としたリストラは労働契約法において認められていません。『スキルを持っていない』『人件費を節約したい』といった買い手側の事情だけでは、社員のリストラは不可能です。

 

ただし、自主退職に追い込まれ、実質的なリストラが行われるケースもあるかもしれません。売り手企業の中でも、採算の取れている事業と不採算事業があります。不採算事業を切り離したいと考える買い手は、不採算事業に携わる社員に異動や単身赴任・低水準の労働条件などを提示するかもしれません。納得いかなければ退職するしかない状況に追い込まれる、事実上のリストラです。

 

人事制度は徐々に移行されていく

株式譲渡や事業譲渡といった手法でM&Aを実施すると、人事制度は買い手企業のものへ移行します。ただし一気に大きく変更すると混乱が生じやすいため、段階的に移行するのが一般的です。買い手の人事制度へ移行することで給料が減る社員に対しては、当面の間は減額分を補償します。1~2年の救済措置を実施しつつ徐々に移行することで、労使トラブルへの発展を防ぐ方法です。

 

次ページ役員は「残る」か「退職」か、ケースバイケース

本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。

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