日本より全然進んでいる中国のオンライン医療サービス
中国でのオンライン診療を売りにするサービスは、コロナを期に突如として出現したわけではありません。オンライン診療市場拡大の土台づくりが、2015年前頃から着々と進んでいたのです。
コロナはオンラインサービス普及の追い風
中国では、新型コロナウイルスの感染拡大以前から、オンラインでの診療や処方薬販売が始まっていましたが、新型コロナウイルス感染拡大により、地方政府や病院がネットサービスを導入することで、新たなオンライン医療アプリや病院が増え、さまざまなネットサービスが登場し、医療のオンライン化が急速に進みます。
その結果、一般市民の利用は一気に拡大しました。自宅からオンラインで病院にオンラインで直接相談できたことで、外出の削減と感染拡大防止を実現します。また医師の兼業が解禁されたことで、大手IT企業を中心に活発な投資が行われ、オンライン診療の市場規模は、約10倍(約1600億円以上)に成長したといわれています。
「BAT」によるサービスの向上
中国ではオンライン診療サービスを提供する企業の数は1000社以上ともいわれています。代表的なものとして、いわゆるBAT(百度:Baidu、アリババ:Alibaba、テンセント:Tencentの中国大手IT企業の総称)を中心とした中国を代表するIT企業が、オンラインサービスを拡大させる役割を担っています。そして中国当局主導で、オンライン診療に対応できるだけのインフラ整備が行われたことで、Wechat(中国版LINE)、アリペイなどのサービスで一般消費者の生活に深いレベルで浸透してゆきました。
BATはあくまで「民営」企業です。そのため、サービスについては各社でバラツキがあり、予約待ち、地域のよる公的医療保険の適用、還付基準が定まらないなど、必ずしも安心して利用できる水準でなかったことが多々あったようです。「着手は早いが、トラブルも多い」。中国では珍しくありません(誰かに怒られそう)。
今後の中国オンライン診療市場の方向性は
現在、中国のネット大手であるBAT以外にも、大手保険会社なども参入して、それぞれ展開する大型プラットフォームを中心に類似のサービス、病院独自のオンラインツールも数千種類も存在しています。代表的なものには、アリババグループの「阿里雲医院」、JD.comの「京東健康」、テンセントグループの「好大夫在線」「微医」、大手民間保険平安グループの「平安好医生」などがあります。
今後もプラットフォーマー間での競争は激しくなることは間違いなく、大規模な淘汰と統合が起きるにことになるとみられています。
中国人の「生の声」
中国のオンライン事情について、いろいろと述べてきましたが、ここはひとつ、直接「生の声」を聞いてみようということで、中国の知人数名に聞いてみました。皆、都市部と地方をよく知る方々ばかりで、社会人としても立派な方々です(なかにはお金持ちもいます)。以下、生の声を簡単にまとめてみました。
・国立、個人問わず、オンライン診療は行われているが、地域によって差がある。
・コロナの影響で、オンライン診療そのものは増加したが、大都市圏の人口の30~35%くらいではないか。
・利用者は50代以下のスマホ利用層で、高齢者は利用しない。やはり、若年層の利用者が中心である。
・診療する前のオンライン審査については、直接病院、診療所を訪問せずに受けられることはとても便利。
・大学病院やその他の大きな病院でオンライン診療の導入率は高いが、個人経営の病院では、まだ少ない。
・メディアで取り上げているほど、対応性は高くはない。24時間対応は意外と少ないようである(少しずつ改善されてはいるらしい)。
・総合案内サイトといえるようなものは、あまり役に立たず、個々でサイト対応している診療所が多い。
・料金は面診もオンラインも同じ。
・薬の送料はまだ有料が多い。
・ほかの端末での受診防止やそのほか違反防止のため、受診時に顔認証を行っているところが多い。
・初診のオンラインは許可されないところがまだまだ多い。
・本当に普及・利用率が高いのは、大都市圏だけではないか。
受診には、審査、口座の登録、顔認証は当たり前で、いろいろと防止対策も進んでいるようです。都市部に住んでいる人達は、回数、頻度は別にして、ほとんどの人が、1回以上は利用したことがありました。
いまや中国ではオンライン診療は当たり前。オンライン診療をしていなければ、総合病院(大病院)とはいえないとのことです。中国では処方箋で購入した薬の配達代が地域によって異なりますが、大体20元(20元は約400円、2022年10月時点)くらい掛かるそうです。そのことについて、中国人からは「高い!」という言葉が目立ちます(なぜかこのことに立腹している方が目立ちました。確か中国では、食事の配達は無料が当たり前だからなのでしょうか?)。
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