創業以来の顧客台帳をデータ化して活用
〈業界〉
旅館業
〈DX後の成果〉
既存の優良顧客を優遇でき満足度が向上、予約件数も130%アップ
DX遂行プロジェクトまでの企業内立場別の視点
■経営者の視点
創業50年を超える旅館を3代目の私が引き継いで25年目です。先々代や先代の経営努力もありリピートのお客様の賑わいは私の代にも続きましたが、それを一変させたのがコロナでした。週末のご予約も近場の人で1日数件、日によってはゼロということも。Go Toトラベルで一時的に満室にはなったものの長くは続きません。
このとき大きな気づきが2つありました。まずGo Toトラベルは、大手旅行サイトの決められた経路で予約が入ります。現場にはITに不慣れな従業員が多く、受け入れにも苦労しました。ITは私も得意でないため準備から非常に時間がかかり、導入後もオペレーションに時間がかかることに。今後を考えるとIT人材の必要性を感じています。
そして何よりも心苦しかったのが、長年ご愛顧いただいているお客様に不便を感じさせてしまったことです。インターネット経由でさまざまな手続きをしていただくため、ご年配の方には難しかったのではないか。また、こちらから積極的にご案内をしてもよかったのではないかと後悔しました。
先達が残してくれた顧客台帳には、お客様一人ひとりの好みやご宿泊時の様子などが克明に記録されています。これらを活かすことが私の代での継承なので、顧客台帳をより活用する方法はないかと模索し始めました。
■DX推進担当の視点
顧客台帳をIT化するために、経営者である私自らが推進責任者となりました。外部のコンサルタントを活用することで、導入のハードルを下げることに。現場での思いや長く続いてきた先代からの歴史を大事にしながら、IT化を進めていきたいと考えたからです。
コンサルタントとは、将来の旅館をどうしていきたいのか。また3年後の姿に向けて、お客様にどのような対応をしたいのかを一つひとつ話し合い明確にしながら、IT化に必要な計画をつくっていきました。
■現場の社員の視点
お客様担当として実際に現場でどのような業務を行っているか、外部のコンサルタントからヒアリングを受けました。日々の対応から週間、月間、特別対応までそれぞれ細かく話をし、ITにくわしくないことを伝えたうえで便利にしたいことを話し合いました。その結果、我々の意見も反映された形で顧客システムが運営されることに。いまでは、なくてはならないものとなっています。