7年間、毎月仕送りを続けた長男
「母には、できるだけ不安なく暮らしてほしかったんです」
そう語るのは、都内に住む会社員の滝沢正志さん(仮名・65歳)。母・澄江さん(仮名)は、地方で一人暮らしをしていましたが、90歳を過ぎた頃から足腰が弱り、通院や日常の買い物も負担になっていました。
「母の年金は月に6万円ほどだと聞いていました。これでは生活は厳しいだろうと思い、7年前から毎月9万円を送るようになったんです」
仕送りは現金書留や振り込みで行い、冬場の灯油代や医療費がかさむ時期には、追加で送金することもありました。これまでに正志さんが母に送った金額は、合計で700万円近くにのぼります。
転機が訪れたのは、今年のことでした。母が92歳で亡くなり、葬儀を終えたあと、正志さんは妹2人とともに、相続手続きのため実家に集まりました。
そこで、何気ない会話の中から、思いもよらない事実が次々と明らかになります。
「え? お兄さんも仕送りしてたの?」
「私たちも、ずっと毎月5万円ずつ送ってたよ?」
正志さんは、耳を疑いました。聞けば、妹2人もそれぞれ仕送りをしており、合計で月19万円近くが澄江さんのもとに届いていた計算に。
「母は“正志だけが頼り”と話していたので、他に仕送りがあるなんて、夢にも思っていなかった」
結果的に、母のもとには毎月かなりの金額が集まっていたことになります。にもかかわらず、母は生前、「お金が足りない」「将来が不安だ」と繰り返していたといいます。
実際、厚生労働省の『国民生活基礎調査(2024年)』によれば、高齢者世帯のうち55.8%が生活意識について「苦しい」と回答しており、高齢期には将来への不安を強く感じやすい実態がうかがえます。
