危機にさらされている日本の製造業
GDPの約2割をも占める日本の製造業ですが、その現場は危機にさらされています。記憶にも新しいマスク不足を始めとしたサプライチェーンの問題は、製造ラインを中国などに依存していたことで自社製品を日本に送れない事態に。こうした現状を踏まえて「2021年版ものづくり白書」では3つのテーマが設定されました。
1.“レジリエンス”…サプライチェーンの強靭化
レジリエンスとは「適応力」とも表現される言葉です。新型コロナウイルスの感染拡大は、自社のみでなく地域や国をも巻き込んで、サプライチェーンのいかなる地点にも同時多発的に被害や影響を及ぼし得ることが判明しました。こういった不確実な事態に対応していくことを「レジリエンス強化」と表現します。
具体的には、対面業務を可能なかぎりデジタル空間に移行し、出勤などの必要性を減らす工夫もしながら危機時のリソースをいかに確保するのかといった、いわゆる 「オールハザード型」の対応も必要と伝えています。
2.“グリーン”…カーボンニュートラルへの対応
カーボンニュートラルとは、温室効果ガス排出量のゼロを目指す対策です。すでに世界各国がカーボンニュートラルへの対応を表明しており、その実現に向けたさまざまな取り組みを進めています。サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルを目指して取り組むグローバル企業が現れ始めました。
投資・資金供給分野においても、環境問題への取り組みをポジティブに判断するグリーンファイナンスの手法を取り入れていて、国内の製造業はカーボンニュートラルへの対応を進めやすい環境が徐々に整ってきています。
3.“デジタル”…デジタルトランスフォーメーション (DX)の取組深化
不確実な事態に対して、製造業は「危機を敏感に感知し、適切なタイミングで組織を再編成して、新たな組織への変容を実現できる企業」を目指すべきだと考えられています。その手法として提唱されているのがDXです。
多くのデジタルツールが市場にあふれるなか、製造業では、付加価値を形成するうえで自社がどの役割を担っていて、そこで管理すべきデータが何かを把握する必要があります。現在、機械や装置と言われるハードウェアが担う制御機能をクラウド化し、生産から供給までの計画をIT技術と融合できれば、現在の市場の勢力図が変わる可能性があると予測されています。