和食、中華、イタリアン…糖尿病でも食べてOK?血糖値を上げる食事、下げる食事【総合内科専門医が解説】

和食、中華、イタリアン…糖尿病でも食べてOK?血糖値を上げる食事、下げる食事【総合内科専門医が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

血糖値に影響するのは、カロリーでなく「ブドウ糖換算量」です。詳細はここでは省きますが、私は境界型糖尿病や中等度までの糖尿病の方には、1回の食事中に含まれるブドウ糖換算量が50gを超えないように指導しています。また、正常な方はブドウ糖換算量75gくらいまでなら大丈夫と考えています。本稿では、普段よく口にする食品の血糖値への影響を考えてみましょう。

イタリアン 〜パスタ、ピザについて

(写真=PIXTA)
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■パスタは「麵の量だけ」気をつけて

パスタの麺自体の量が血糖値には問題となります。パスタの味付けや種類にもよりますが、麺180gくらいでブドウ糖換算量は22〜30g前後です。たらこ、明太子、和風キノコ、ミートソース、シーフードなどはほとんどブドウ糖を含んでいません。麺の量だけ気をつけて美味しく食べてください。むしろこれらの具材を併用すると、麺単独よりもむしろ血糖値は下がります。

 

■ピザも「生地の量だけ」気をつけて。チーズはどんどんかけてOK

ピザも生地の量だけ気にしてください。ピザ100gでブドウ糖換算量は25g前後ですので、糖尿病の方にはおすすめです。チーズもどんどんかけてください。ただし蜂蜜は大さじ1杯でブドウ糖15g相当になりますので注意です。

中華 〜ラーメン、餃子、チャーハンについて

(写真=PIXTA)
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■ラーメンも餃子も「具材」を追加したほうが、血糖値への影響は低い

ラーメンは大体ブドウ糖換算量で40g前後です。麺の量が影響し、チャーシューを加えるとむしろ血糖値は下がる傾向にあります。餃子の皮には小麦粉が使われており、個数によっては血糖値に影響しますが、キャベツ、ミンチ肉が入ったいわゆる“料理”としての餃子なら6個でブドウ糖15g相当です。ちなみに皮だけなら22g前後と計算されます。

 

■血糖値への影響は「チャーハン≦白米」

チャーハンは、カロリー面では同量の白米よりやや多いですが、血糖値への影響は同等かやや少なくなります(もちろん、白米とチャーハンはそれぞれ同量であることが条件です)。

 

ラーメン1杯、餃子6個、半チャーハンなら概算で40g+15g+20g=75g見当です。この量では糖尿病の人は血糖値がかなり上がります。正常な人は許容範囲内だと思われます。

和食 〜トンカツ、牛丼、寿司、オムレツ、ステーキ定食

a.)トンカツ定食について

トンカツ定食で血糖値に直接影響するのは、白米の量と衣です。

 

薄力粉、パン粉の量やそれらのGI値を考慮すると、トンカツ定食一人前でブドウ糖換算量23g前後です。ご飯を150gとするとブドウ糖換算量は41g。トンカツソースは大さじ1杯で糖質4.7g見当ですが、ソースのGI値からするとブドウ糖換算は1.41gとほとんど血糖値には影響しません。おおむね衣とご飯が血糖値に影響します。

 

これだけで計算するとブドウ糖換算量は23g+41g=64gですが、キャベツのブドウ糖吸収抑制効果や豚肉自体のインスリン分泌効果を考えると、実際にはずっと低くなります。測定してないのでわかりませんが、64→50gくらいまで下がる可能性があります。

 

たとえ糖尿病があっても中等度でコントロールされていれば、これを超えなければ大丈夫だと思います。キャベツ多めかつご飯少なめで、ゆっくり食べてください。

 

b.)牛丼について

かつて同志社大学大学院生命医科学研究科アンチエイジングリサーチセンター、糖化ストレス研究センターから、牛丼1杯と白米との血糖値に対する詳細な比較が発表されています。

 

結論としては、ご飯の量を同一にした条件下では、タレや玉ねぎの影響はさほどでないものの、白米単独よりも牛丼にしたほうが血糖変動に関しては低くなると発表されています。やはり牛肉からのインスリン追加分泌効果によるものと考えられます。

 

c.)寿司盛り合わせについて

私が大変勉強にさせていただいたfood-hack.comより引用いたします。1人前の寿司盛り合わせ390gとご飯1膳の食後血糖値に与える影響は、ほぼ同じとのデータがあります。

 

ご飯の量は、寿司のほうが概算で230gであるのに対して、ご飯1膳は150gでした。それぞれのブドウ糖換算量はほぼ40gと同様でした。つまり食後血糖に与える影響はほぼ同じということです。これは牛丼の項目で説明した肉の影響と同じ理屈で、魚に含まれるタンパク質からのインスリン追加分泌効果で説明がつきます。

 

d.)オムレツ1人前について

三越伊勢丹のレシピを参考に見ていきましょう。このレシピでは、卵2〜3個、バター10g、塩・こしょうを各少々、ケチャップ大さじ3、赤ワイン大さじ2とありました。

 

ケチャップは、日本糖尿病協会の資料によると大さじ1杯あたり3.9gの糖質でした。これはブドウ糖換算では大さじ3杯にしても計算上たった3.4gです。しかし、糖質だけの表示ですと大さじ3杯は3.9×3=11.7gにもなってしまいます。同じく赤ワインに糖質があるとされますが、GI値から計算すると赤ワインのブドウ糖量は無視できます。

 

このようにして計算すると、オムレツは、ケチャップを考えてもブドウ糖換算量は血糖値に影響する最小ブドウ糖量の5gにもなりません。ちなみにオムライスとなるとご飯の量が問題となります。

 

e.)ステーキ定食について

たまには奮発して、ステーキ定食にしてみましょう。もうおわかりのように、ステーキやドレッシングにソースをかけても、そのブドウ糖はほとんど無視できます。和牛や輸入牛による違いはありません。

 

問題はポテトフライとビールおよびご飯です。ご飯は1膳だとブドウ糖換算量41gです。ポテトフライを50gとすると糖質は15g見当ですが、GI値0.64で計算すると、ブドウ糖換算量は15×0.64=9.6gとなります。ブドウ糖換算量は15×0.64=9.6gとなります。

 

このまま計算するとwtGLはご飯1膳41g+ポテト9.6gですが、牛丼の例でもおわかりのようにステーキがインスリン分泌効果を発揮するために、総合的wtGLはもっと下がります。つまりステーキの効果でご飯とポテトによる血糖上昇は随分抑えられます。ステーキが大きければ尚更です。実際はご飯やステーキおよびポテトを食べる速度などの条件で食後血糖は変化しますが、糖尿病の方には安心して食べられるメニューであることには間違いありません。

 

このときに合わせたい飲み物は、個人的にはビールです。日本酒とビールにはブドウ糖があります(ちなみにアルコールは、ワイン、ジン、ブランデー、ウオッカ、ウイスキー、ラム、焼酎などにはブドウ糖はありません)。しかし日本酒2合でやっとブドウ糖換算量6gです。肝心のビールは、350mlならブドウ糖換算量は7gとちょっと微妙な量です。しかしステーキをしっかり食べれば、これくらいは問題ないでしょう。もっとも食欲との関係もありますが。奮発してステーキ定食を注文する際の参考にしてください。

 

正常な方はブドウ糖換算量75gくらいまで、境界型糖尿病や中等度の糖尿病の方は50gを超えないことをオススメしています。

 

 

團 茂樹(だん しげき)

宇部内科小児科医院 院長

総合内科専門医

 

日本大学医学部附属病院で血液のガン治療に従事した後、自治医科大学へ国内留学、基礎研究分野の経験を経て大学病院や地方病院に勤務。その後、遺伝子研究の本場・カナダオンタリオ州立ガンセンターで遺伝子生物学に関する基礎研究に従事。帰国後、那須中央病院の内科部長を経て、宇部内科小児科医院副院長に就任。その後3年間、千代田漢方クリニック院長を兼任。

 

以来16年余り漢方治療を導入。2010年から現職。2015年に総合内科専門医を取得。総合臨床医として様々な症例に携わるとともに、臨床で培った経験や医療情報の中から選りすぐったアドバイスを行うダイエット法には定評がある。

 

著書に『糖尿病は炭水化物コントロールでよくなる』(2022年6月刊行、合同フォレスト)がある。

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