「高カロリーの割に太らないもの、低カロリーでも実は太るもの」の決定的差【医師が解説】

「高カロリーの割に太らないもの、低カロリーでも実は太るもの」の決定的差【医師が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

ダイエットを継続・成功させるには、摂取カロリーを減らせば痩せるという「カロリー神話」から解き放たれ、脂質もしっかり摂ることが大事です。総合内科専門医・團茂樹氏(宇部内科小児科医院 院長)が、ダイエットのポイントを解説します。

ダイエット成功のカギは「インスリン」を知ること

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<ポイント>

①人それぞれ体質が異なります。これは如何ともしがたい問題です。

②カロリーが必ずしもダイエットの最大要因ではないことがわかってきました。

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ダイエットを成功させるためには、肥満ホルモンといわれるインスリンについて知っておく必要があります。インスリンというと、糖質との関連として血糖降下作用があることがクローズアップされていますが、それだけではありません。

 

ここからは、インスリンと三大栄養素(糖質・タンパク質・脂質)の代謝、および関連する臓器との関係について見ていきましょう。

 

インスリンは、栄養素の同化を促進して、筋肉、脂肪組織、肝臓に取り込みます。

 

【糖質代謝】

●インスリンは、グルコース(ブドウ糖)の細胞内への取り込みを促進します。これは、筋肉(特に骨格筋)の筋肉細胞、脂肪組織の脂肪細胞で起こります。

 

●インスリンは、肝臓や骨格筋においてブドウ糖からグリコーゲン合成を促進します。

 

●肝臓において余剰な糖質を中性脂肪へ変換(脂肪新生)。これが脂肪肝や内臓脂肪の要因となります。

 

【タンパク質代謝】

●インスリンは、骨格筋に作用して、アミノ酸の細胞内への取り込みを増加させて、タンパク質合成を促進します。

 

●筋肉におけるタンパクの崩壊(タンパクの異化)を防ぎます。

 

【脂質代謝】

●インスリンは、脂肪分解(組織中にある中性脂肪の分解)を抑制します。反対に、インスリンが不足すると脂肪分解へと傾きます。このことはしっかり銘記してください。意外でしょうけれど、脂肪を摂取する際、同時に糖質や大量なタンパク質を摂取することを避けるとインスリン分泌が起こりにくく、脂肪分解の方向へ働きます。

インスリン分泌作用のあるもの、ないもの

■インスリン分泌作用のあるもの

ここでは栄養素別で論じますが、現実においては、種々の食べ物にはそれらに特有の比率で栄養素が混在していていることに留意してください。

 

a)糖質の中のブドウ糖

b)タンパクが体内で代謝されたアミノ酸

c)脂質のごく一部の中鎖脂肪酸(MCT) 〜ココナッツオイルなど

MCTはカロリーもあり、かつインスリン分泌作用もありますが、現実的には肥満の方向へ働くわけではなく、肝臓に到達して他の脂質を分解する作用を発揮すると言われています。このことは、カロリーは太る要因ではなく、後述する「ニュートリゲノミクス」の代表例といえます。

 

■インスリン分泌作用のないもの

a)糖質の中の果糖

果糖にインスリン分泌作用はありませんが、過剰摂取すると容易に肝臓内で中性脂肪に変換されてしまい、内臓脂肪や肥満の要因になります。

 

b)MCT以外のほとんどの脂質

ほとんどの脂質にインスリン分泌作用はなく、糖質の多い食事との同時摂取でなければカロリーの割に太ることはないと考えられます。

「インスリン分泌を減らす」ための食べ方

食べ物はただのエネルギー源やカロリー源ではなく“情報”であり、食べ物には体のあらゆる生理機能に影響を与える指示が含まれている、という「ニュートリゲノミクスの理論」がこれから広がってくると思います。

 

ダイエットを継続するためには、ほとんどの場合においてインスリン分泌を減らす工夫が欠かせません。

 

多くの食べ物は三大栄養素の構成割合およびそれらの摂取量によって程度の差はあるものの、インスリン分泌を促します。同じ食品でもゆっくり時間をかけて食べるか、または早食いするか、はたまた食物繊維の多い食品を併用するかなどでもインスリン分泌量は違うと考えられますが、それらの影響を逐次述べると複雑になるため本記事では省略します。ともかく、何でも早食いはしないほうがいいようです。

 

【避けたいもの 〜インスリン分泌作用の大きいもの】

a)炭水化物の中でも食物繊維が取り除かれている精製された穀物

b)砂糖やブドウ糖果糖液糖を多く含むおやつや飲料水および調味料

c)脂質がほとんどないタンパク質の過剰摂取

 

※註:日常の食事においてはインスリン分泌に占める割合は炭水化物食品の方がタンパク質食品よりずっと多いと考えられます。特に間食においては顕著だと思います。

 

【摂りたいもの 〜インスリン分泌が少ないもの】

a)食物繊維 ナッツ類、キアヌ、チアシード、枝豆、コンニャク

b)お酢やリンゴ酢

c)水、炭酸水、コーヒー(インスタントはさける)、赤ワイン適量、お茶

d)ダークチョコレート、チーズ

e)いい脂質:ナッツ類、乳製品、アボカド、オリーブオイル、えごま油、アマニ油、魚の油など

 

※註:純粋な脂質自体は、カロリーとしては多いですがインスリン分泌はほとんどなく、肥満とはあまり関係ありません。

 

「いつ、何を食べるか」も重要

一日のうちでインスリンが分泌される時間をできる限り短くする、あるいは、インスリンが分泌されない時間をできる限り長くする工夫が大事です。

 

世間で流行っている8時間プチダイエットは私も賛成です。これは、食事をする時間を8時間以内に収めるというダイエット内容のようです。その他の16時間は、飲み物としては水、お茶、ドリップコーヒーに限り、食べ物はダークチョコやチーズおよびナッツ類に準じたものを少しだけ摂る、という提案だと思います。

 

私は、この食事をしない16時間の中でも、「糖質抜きの食事」なら構わないと思っています。

 

たとえば、肉や魚などを熱に対して安定的な飽和脂肪酸であるバターやラードで炒めて、緑黄色野菜にココナッツオイルやオリーブオイルをドレッシングとするのもおすすめです。もちろん卵や豆腐、納豆などのタンパク食品でも構いません。先ほどタンパクからもインスリン分泌を促すと書きましたが、糖質を一緒に摂ることなく、かつ常識量であればインスリン分泌はほんのわずかであり空腹時のインスリン分泌状態に近いと考えられます。これなら、食事に対するフラストレーションも少なくなると考えます。

注意すべき「精製された食品」

これは個人個人で判断してください。

 

たとえば、パン、べ―グル、イングリッシュマフィン、ナン、ロールパン、グリッシーニ、クラッカービスケット、スコーン、トルテイーヤ、ラップサンド、マフィン、クッキー、ケーキ、ドーナツ、パスタ、麺類などです。

 

気になる方はネットでこれらに含まれる糖質の量をお調べください。個人の目的に合わせて量を決めるといいでしょう。

内臓脂肪と皮下脂肪について

i)門脈を通過するという解剖学的見地からも、糖質が主に内臓脂肪を作ると考えられます。

ii)多くの脂質は門脈を経ず胸管から大静脈を介して体内を循環することから、皮下脂肪の主な原因と考えられます。解剖学や栄養面からだけでなく運動面の要因を考慮すると、もっと複雑なメカニズムになることが考えられ、人それぞれであることは想像に難くありません。

 

以下は、食事と運動についての自己流の解釈です。

 

i)相撲とボディビルはレジスタンス運動(いわゆる筋トレ)が主で、有酸素運動は少ないと考えます。両者での皮下脂肪の差は糖質や脂質の取り方による差であると思います

 

ii)サッカーとマラソンでは、レジスタンス運動の差が筋肉量の差を生んでいるようです。マラソンはもちろんですが、サッカーも有酸素運動が多く、さすが体脂肪は抑えられています。

 

【図表】運動の比較

 

三大栄養素のバランスを考えながら、また特に脂質のほとんどは高カロリーでも、インスリン分泌作用のある食品と併用しない時間を持つという一工夫をすれば、食事を我慢することなく上手に痩せていけると思います。筋肉維持にもなりますよ。

 

 

團 茂樹(だん しげき)

宇部内科小児科医院 院長

総合内科専門医

 

日本大学医学部附属病院で血液のガン治療に従事した後、自治医科大学へ国内留学、基礎研究分野の経験を経て大学病院や地方病院に勤務。その後、遺伝子研究の本場・カナダオンタリオ州立ガンセンターで遺伝子生物学に関する基礎研究に従事。帰国後、那須中央病院の内科部長を経て、宇部内科小児科医院副院長に就任。その後3年間、千代田漢方クリニック院長を兼任。

以来16年余り漢方治療を導入。2010年から現職。2015年に総合内科専門医を取得。総合臨床医として様々な症例に携わるとともに、臨床で培った経験や医療情報の中から選りすぐったアドバイスを行うダイエット法には定評がある。

著書に『糖尿病は炭水化物コントロールでよくなる』(2022年6月刊行、合同フォレスト)がある。

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