(※写真はイメージです/PIXTA)

病院に行かなくても、糖尿病の可能性が高いかどうかを確かめることは可能です。用意するのはドラッグストアやネット通販で購入できる「尿糖検査テープ」だけ。採血などの手間もかかりません。総合内科専門医・團茂樹氏(宇部内科小児科医院 院長)が、自宅や職場でできる簡単な検査方法を紹介します。

病院で行われる糖尿病の検査とは?

糖尿病に関する検診項目には血糖検査、HbA1cおよび尿検査などがありますが、これらは空腹で検査されることが多いようです。

 

糖尿病本来の怖さは、その血糖変動の大きな落差によるところが大です。本来はその落差を測定して糖尿病を診断するものです。代表的な検査としては、ブドウ糖75gを溶かした水を飲む「75gブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」があります。さらに妊娠糖尿病スクリーニング検査として「50gブドウ糖負荷試験(50gOGTT)」もあります。これらはトレランG検査とも言われます。このGはもちろんglucose(グルコース=ブドウ糖)のことです。ちなみに形状は液体です。

ブドウ糖負荷試験で現れる血糖値の変化

■ブドウ糖負荷試験における正常型、境界型糖尿病型、糖尿病型の特徴

<75gOGTTの結果>

1)正常型と判定される方の血糖変動は、摂取後30〜60分くらいにピークを迎え、ほとんどの最高値は140mg/dlを超えていません。

 

2)境界型糖尿病型の方はブドウ糖負荷後1時間近辺で血糖値がピークになって、この時点の血糖値は多くの例で200mg/dlをわずかに超えています。

 

3)糖尿病型の方はそのほとんどの例において負荷後1時間で200mg/dlを大きく超え、さらに血糖ピークが2時間のほうへずれていっています。

 

<50gOGTTの結果>

妊娠糖尿病のスクリーニング検査として50gOGTTがあります。このデータでは、負荷後1時間で140mg/dlを超えた人は確定診断のために75gOGTTへ回されるようです。このことと、正常人の日常生活における血糖変動のピークを140mg/dlまでと考えていることとは何か符合しています。

血糖変動に影響を与えるのは何か?

■糖尿病の食事療法は「カロリー制限優先」が一般的だが…

75gOGTT(300キロカロリー含有)に対して、三大栄養素を一定の割合に含有した「糖尿病テストミール検査食(450キロカロリー含有)」を糖尿病専門医指導のもとに作成し、双方の比較検討をしたデータがあります。ここからわかることは以下3点です。興味のある方はネットで両負荷試験を探し、各負荷試験における各型の血糖変動を一見されてください。

 

ⅰ)摂取後の血糖変動パターンは固形、液体にかかわらず類似しています。

 

ⅱ)300キロカロリーの75gOGTTのほうが、450キロカロリーのテストミール食よりも、正常型、境界型糖尿病型、糖尿病型のどのタイプにおいてもはるかに血糖変動が高く推移しています。

 

ⅲ)テストミール食に含まれる炭水化物量はほぼブドウ糖換算量50g相当と計算されます。

 

これらの負荷試験の結果から、食後血糖変動に影響するのはその摂取カロリー量でなく、摂取ブドウ糖換算量によることがわかります。

 

■糖尿病テストミール負荷試験食からわかること

1食につきブドウ糖換算量50gを摂食すると、境界型糖尿病と判断されている方の血糖変動は、日常診療で見る軽症糖尿病の方の血糖変動そのものとなります。ましてや糖尿病と診断されている方においては、この1食ブドウ糖換算量50gは過剰だと判断できます。

正常な方の血糖変動および血糖値と尿糖出現との関係

■正常な方の尿糖は、食事の有無にかかわらず「常に陰性」だが…

我々の日常の食生活においては次のことが知られています。

 

1)正常な方はおおむね80~140mg/dlの間で血糖変動しています。

2)血糖値が大体160mg〜170mg/dl以上になると尿糖が陽性となります。

 

このことから、例外はあるにしても、正常な方の尿糖は食事の有無にかかわらず常に陰性です(※参考:現在ではあまり100gOGTTは行われませんが、過去のデータを見ると、正常とされている方の血糖値ピークの1時間近辺は160mg/dlくらいでした。1食のブドウ糖換算量が100gを超えると、たとえ正常人でも食後1時間後には尿糖が出現するかもしれません)。

自宅や職場でできる!糖尿病の有無を自己判断する検査

■空腹時検査では見落としてしまう血糖変動を間接的に反映した検査の提案

上述の75gOGTTの結果より次のことが言えます。

 

75gブドウ糖換算相当量の食事を摂取し、1時間を経過した最初の尿検査で尿糖が陰性なら、糖尿病の心配はないと考えていいと判断します。なぜなら血糖値が最も上昇する1時間を超えて排尿検査をしているからです。

 

血糖値とはその瞬間の、ある意味“点”の検査ですが、尿検査は採尿するまでの間を反映する、“線”の検査と考えられます。つまり尿検査は血糖変動の流動性をある意味間接的に反映していると考えられます。

 

糖尿病の有無を自己判断するため、年に1〜2回は負荷試験を実施してください。あなたは尿糖検査テープを用意するだけです。当然、糖尿病の診断がすでについている方は行なわないでください。

 

では、実際に病院でなく自宅や職場などで具体的にどうするかお話しましょう。

 

【①塩おむすび2個で調べる場合】

i)白米150gには糖質55g含まれていますが、そのうち白米のGI値75%くらいですのでブドウ糖換算量は55×0.75=41gと計算されます。ここでいう塩むすび1個は白米150gとしています。かなりな量ですよ。

 

おむすび2個だとブドウ糖82g相当と概算されます。75gブドウ糖換算相当に減らしても構いません。これを一度に食べ、1時間過ぎた時点の採尿で尿糖が陰性であれば、糖尿病の心配はほとんどないと考えて構いません。

 

ここでのおむすびは、塩むすびにしておきましょう。なぜならいくらや焼き肉などのタンパク質が豊富な具材が入っていると、カロリーは増えてもブドウ糖換算量は減ってしまうからです【図表】。この理屈は別の機会に。細かい話のついでにもう一つ言うと、この際のおしんこは普通に摂っても血糖値に影響ありません。

 

『食後高血糖と食後高脂血症を同時に観察するテストミールのパイロットモデルの開発 ―テストミールAについての報告―』の図表を基に作成
【図表】参考:食後血糖の推移の比較 『食後高血糖と食後高脂血症を同時に観察するテストミールのパイロットモデルの開発 ―テストミールAについての報告―』の図表を基に作成

 

ii)ブドウ糖換算量50gに相当するご飯の量180gくらいにした塩むすびを食べ、摂取後1時間過ぎた時点の尿糖が陽性なら要注意です(※参考:好みによって、フランスパンや食パンなどで試したい方はそれらのGI値を調べて応用するのもよいでしょう)。

 

【②カレーライスで調べる場合】

i)カレーライスは516gの量でブドウ糖換算量83gとのデータがあります。カレーの香辛料自体にはブドウ糖はほとんどありません。カレールウとご飯でブドウ糖換算量が決まりますので、75gブドウ糖相当量なら516×75÷83=466。ざっくり460~480gのカレーを食べて1時間後に出る尿糖が陰性なら、糖尿病は心配しなくていいでしょう。

 

ii)カレーライスのブドウ糖換算量50gは310g見当と計算されます。この程度の量で1時間後の尿糖が陽性になるのは要注意ですので、精密検査をオススメします。

 

【③ラーメン、餃子、半ライスで調べる場合】

i)細かな計算は省略しますが、おおむね、ラーメン1杯はブドウ糖40g相当。餃子の皮は、大きさによりますが1個分で糖質6g、GI値が60%前後。よって餃子の皮6個で約22g程度のブドウ糖換算量です。ちょっと細かくなりますが、餃子の具材のキャベツやミンチの肉を含んだ餃子自体は、6個でブドウ糖換算量15gとの報告があります。ここでは詳しくは書きませんが、炭水化物単独よりも他の食材を足すと、カロリーは増えても血糖値に影響するブドウ糖換算量は減ります! 餃子に半ライスを含めた合計は40+15+20=75gブドウ糖相当量となります。これらを食べたあと同様に尿糖を検査し、陰性なら糖尿病の心配はありません。

 

ii)これらの組み合わせでブドウ糖換算量50g相当を摂取して、同じく食後1時間を過ぎた時点の尿糖が陽性となれば医療機関へ行ってください。

 

上の条件はあくまでも負荷試験ですので、どちらかの検査を年1〜2回程度行うとよいでしょう。

日頃の尿糖検査は「食事から約1時間後」がオススメ

■たとえ糖尿病でも「空腹時の尿糖検査」は陰性になりがち

普段使いの尿糖検査では、なんとなく食べすぎた、甘いものを食べすぎたなど、「何となく気になった食事」の約1時間後に検査することを心がけてください。その時点で尿糖陰性なら大丈夫と考えて問題ありません。

 

尿糖排泄薬治療中もしくはコントロール不良の糖尿病の方は例外ですが、空腹における尿検査では、たとえ糖尿病の方であっても尿糖は陰性のことがほとんどです。尿糖検査は1時間後あたりがオススメです。

 

 

團 茂樹(だん しげき)

宇部内科小児科医院 院長

総合内科専門医

 

日本大学医学部附属病院で血液のガン治療に従事した後、自治医科大学へ国内留学、基礎研究分野の経験を経て大学病院や地方病院に勤務。その後、遺伝子研究の本場・カナダオンタリオ州立ガンセンターで遺伝子生物学に関する基礎研究に従事。帰国後、那須中央病院の内科部長を経て、宇部内科小児科医院副院長に就任。その後3年間、千代田漢方クリニック院長を兼任。

 

以来16年余り漢方治療を導入。2010年から現職。2015年に総合内科専門医を取得。総合臨床医として様々な症例に携わるとともに、臨床で培った経験や医療情報の中から選りすぐったアドバイスを行うダイエット法には定評がある。

 

著書に『糖尿病は炭水化物コントロールでよくなる』(2022年6月刊行、合同フォレスト)がある。

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