要介護の一因・サルコペニアを予防!「1日1万歩ウォーキング」より効果的な「1日5分程度」の運動【医師がアドバイス】

要介護の一因・サルコペニアを予防!「1日1万歩ウォーキング」より効果的な「1日5分程度」の運動【医師がアドバイス】
(※写真はイメージです/PIXTA)

介護に至る要因の一つ、「サルコペニア」。加齢とともに筋肉量と筋力が低下するのは自然なことですが、それを「年のせい」で甘受するのは、将来の自分にツケを回すことに繋がります。サルコペニアを予防するには、どうすればよいのでしょうか? 総合内科専門医・團茂樹氏(宇部内科小児科医院 院長)が、自宅で手軽に取り組める予防法を紹介します。

「サルコペニア」の予防は“高齢者の努め”

高齢化社会に突入し、国は介護制度の充実などの対応策を立てて苦慮していますが、今のままでは若者に経済的、肉体的負担がかかっていくのは避けられない状況です。

 

私は、介護の要因の一つとなる「サルコペニア」を予防することを、高齢者の努めとして認識してほしいと思っています。

 

サルコペニアとは、ギリシャ語で筋肉を意味するsarx/sarcoと喪失を意味するpeniaから成る造語で、加齢による筋肉量と筋力の自然低下のことです。

 

また、フレイルという言葉もよくいわれます。これはFrailtyをもとにした造語です。フレイルというと社会的弱者や神経症、神経疾患などの多くの意味も含まれています。

将来の自分に「ツケ」を回さないためにも…

運悪くがんが進行してしまったり、脳梗塞で倒れたり、難病で治療困難な状態の方もいらっしゃいますが、以下は、大病もなく単に加齢変化によるサルコペニアを甘んじて受け入れてしまいがちな高齢者へのアドバイスです。

 

i)中年の方はぜひ、生活習慣病をしっかりとコントロールしてください。そして脳梗塞、心筋梗塞、慢性閉塞性肺疾患などの予防に努めましょう。将来、高齢者になったときの自分にツケを回さないでください。

 

ii)高齢者(年齢設定は個々人で違って構いません)になったら、生活習慣病のコントロール以外に、サルコペニアに立ち向かう工夫をしてください。

 

※註1:「健康診断の結果をただ様子見する」という甘い判断はやめて、しっかりと治療してください。特に個人的に実感していることとして、悪玉コレステロールの高い人は治療薬を使わないと理想値まで下がりません。タバコは、肺にも血管にも百害あって一利なしです。

 

※註2:高齢者の慢性疼痛の多くは、加齢と運動不足による筋力低下から来ています。手術が必要とされる疼痛はもちろんあります。しかし、手術はうまくいっても筋力低下への対策を併せて行わないケースでは、慢性疼痛はよくならない印象があります。

教科書的な「運動の種類」と「使われる筋肉」の関係

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【運動の種類】嫌気性運動(無酸素運動)、強度なレジスタンス運動

短距離走、バーベルなどを使った筋肉トレーニング、相撲など、短時間に行う強度の高い運動のことです(これは「誰もがどこでもできる運動」ではないですね)。レジスタンス運動とはいわゆる筋トレです。

 

●使われる筋肉:速筋(白筋)

⇒速筋(白筋)は、大きな瞬発力を発揮する際に使われます。酸素を使わない運動なので、速筋(白筋)を使う運動は「無酸素運動」ともいわれます。エネルギー源はブドウ糖です。

 

【運動の種類】有酸素運動

ジョギングやウォーキング、サイクリング、水泳など、筋肉に軽〜中程度の負荷を継続的にかける運動のことです(無酸素運動よりも取り組める方は多そうですが、時間と場所が必要ですね)。

 

●使われる筋肉:遅筋(赤筋)

⇒酸素を利用するため、赤血球のヘモグロビンが使われます。そのため「赤筋」といわれますが、速筋に対して「遅筋」ともいわれています。エネルギー源は脂肪酸です。

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以上が教科書的にいわれる筋肉ですが、これらは若者や中年の方向きの運動です。高齢者が意識すべきは桃色筋肉です。最近の研究で、白筋・赤筋以外に「桃色筋肉」という筋肉が存在することが明らかになっています。桃色筋肉は速筋と遅筋が混ざった筋肉のことです。

「1日1万歩、一駅前で降りて歩く」は筋力アップに役立たない

高齢者になると、主に白筋が落ちてきています。私ごとですが、短距離走には自信がありましたが、30歳のときですら短距離走で足がもつれました。白筋は意識して運動していないとこのザマです。

 

よく聞く「1日1万歩、一駅前で降りて歩いて帰ろう」というスローガンの、何と目的意識の低いこと。私の患者さんには、時間があって景色を見たり、知り合いと楽しく一緒に歩いたりすることは精神衛生上はよいと思いますが、筋力アップには役立ちません、と常に説明しています。

5分程度でOK。高齢者におすすめの「桃色筋肉をつける運動」

桃色筋肉をつけるには、適度な強度のレジスタンス運動が必要です。以下に挙げるどの運動も、5分以内で構いません。また、広い空間や専用の設備を必要とせず、自宅で取り組めるという意味で、場所と時間を選ばない運動といえます。できることから取り組んでみましょう。

 

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1)スクワット

膝を痛めないように、そのときの筋力に合わせて5分程度。ゆっくり行うのも、速く行うのもお好みで。

 

2)全身の筋肉を緊張させた「壁押し」や、相撲取りの「鉄砲」

壁押しや鉄砲は、壁や柱などを全身の力を込めて押す運動です。全身の筋肉を意識して、最大の70%ほどの力で押し、その状態を7秒ほどキープ。少し休んでから、同じ要領で壁や柱を押す。この運動を5分ほど行います。

 

3)体力に合わせた腕立て伏せ

これも5分程度、自分のペースで行います。きついようなら膝をついてもいいですが、それでも70%ほどの力を込めることが大事です。自分に合った動作でアレンジして構いません。筋肉に力をみなぎらせることを意識してください。

 

4)適度な重さのダンベルで筋トレ

適度な重さは人それぞれですが、高齢者の場合、ダンベルの重さは500g~1kg前後が目安といわれます。自宅にダンベルがない場合は、水入りのペットボトル(500ml)でも代用可能です。

 

5)俳優・美木良介氏が考案した「ロングブレス」

 

6)音の出ない笛をペンダントとしてつけておき、口、喉、肺、腹筋を鍛える

 

7)エア自転車こぎ

仰向けになって、全速力で自転車を漕ぐ動作をする運動です。体力に合わせて20〜60回ほど行ったら1〜2分間休み、また全速力で20〜60回、1〜2分休み、もう一度全速力20〜60回で1クール。これを最低1日1クール、体力に合わせて適宜増やしましょう。特にオススメの運動です。

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以上の運動のどれかを、自分のペースと体力に合わせて行ってください。

ビタミンDやタンパク質など、しっかりした栄養摂取も大切

サルコペニアを予防するには、上記の高齢者用のレジスタンス運動に取り組むことはもちろんですが、栄養面も大事です。

 

多くの日本人はビタミンDが不足しているようです。これは25(OH)D濃度検査でわかります。この濃度は骨格筋量、運動機能、それと認知機能と関連するのでは?と一部での報告があります。天然型ビタミンDで補うことができます。まだしっかりとしたデータとは言いがたいですが、とにかく安価なので取り組みやすいです。

 

また、加齢とともに筋肉でのタンパク合成能が低下するのではないかという見解もあり、高齢者こそより多くのタンパク質の摂取が必要であるという意見もあります。また一部の報告では、ロイシンを含む必須アミノ酸摂取を勧める向きもあります。

 

しかしこれは筋力低下が進んでいるケースだと思われます。

 

もっと早い時期から食事から、たとえば卵、納豆、豆腐や肉魚などしっかり摂ると筋肉アップに繋がるはずです。

 

タンパクというと慢性腎臓病(CKD)との関連が取り沙汰されますが、CKD3bまでなら、筋力アップのためにタンパク質は多く摂ってもらいたい。さらに、タンパク質は体内でインスリン分泌を刺激するので、糖尿病の方にもオススメです。

 

サルコペニア予防のための桃色筋肉運動、栄養面に関する努力は、社会に対する高齢者の努めであると思っています。

 

 

團 茂樹(だん しげき)

宇部内科小児科医院 院長

総合内科専門医

 

日本大学医学部附属病院で血液のガン治療に従事した後、自治医科大学へ国内留学、基礎研究分野の経験を経て大学病院や地方病院に勤務。その後、遺伝子研究の本場・カナダオンタリオ州立ガンセンターで遺伝子生物学に関する基礎研究に従事。帰国後、那須中央病院の内科部長を経て、宇部内科小児科医院副院長に就任。その後3年間、千代田漢方クリニック院長を兼任。

以来16年余り漢方治療を導入。2010年から現職。2015年に総合内科専門医を取得。総合臨床医として様々な症例に携わるとともに、臨床で培った経験や医療情報の中から選りすぐったアドバイスを行うダイエット法には定評がある。

著書に『糖尿病は炭水化物コントロールでよくなる』(2022年6月刊行、合同フォレスト)がある。

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