糖尿病治療の主役は「薬」?
昨今の糖尿病治療薬の開発は目覚ましく、個々の状況に合わせた種々の治療選択ができるようになってきています。治療効果判定に関して、ある意味“血糖変動の平均値”を示す指標であるHbA1cだけで行えば、薬剤治療が糖尿病治療における主役だと考えてしまうかもしれません。しかし動脈硬化の大きなリスク要因とされている「食後過血糖」、つまり食後血糖スパイクをなだらかにするためには、やはり食事の内容や摂り方などの指導が欠かせません。
たとえば、どんな糖尿病治療薬を服用していても、さらにHbA1c7以下で良好コントロールだと判断されている場合でも、一度の食事でおにぎりを2個一気に食べてしまうと、食後過血糖は避けられません。血糖値は200mg/dlをはるかに超えるでしょう。しかし300gのステーキのみであれば、食後過血糖は生じません。
食べ物の種類に関わらず、食後血糖の急激な変化をしっかりと抑える薬はまだ存在していません。あえて言えば「超速効性インスリン注射」かもしれませんが、おにぎり2個を一気に食べないように指導をすれば、低血糖のリスクを持ち合わせる超速効性のインスリン注射はいらないはずです。またインスリン注射に関して言えば、いまだに自分の体の膵臓から分泌される自己インスリンと同じ経路で代謝されるものはありません。
「カロリー」ではなく「ブドウ糖換算量」が問題
食品には、それぞれの食材に特徴的な割合でタンパク質、脂質および炭水化物が含まれています。しかし糖尿病治療においては、どんな食品を摂取したとしても食後血糖値(血中ブドウ糖濃度)の変化で治療効果が判定されます。
つまり糖尿病治療においては、食品が持つカロリーではなく、食品の「ブドウ糖換算量」が問題となります。食後過血糖を抑えるには「GI値(ブドウ糖換算率)」や「GL値(ブドウ糖換算量)」という概念の理解が必要となります(以降で詳述)。