(画像はイメージです/PIXTA)

香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。

ハンセン指数 17,216.66 pt (▲2.95%)
中国本土株指数 65,880.71 pt (▲3.19%)
レッドチップ指数 3,344.05 pt (▲1.83%)
売買代金951億1百万HK$(前日570億0万HK$)

米9月の失業率は約50年ぶりの低水準を記録

先週末に発表された米雇用統計は雇用市場が堅調であることを示唆する内容だった。9月の失業率は前年比で3.5%と前月(3.7%)から低下し、約50年ぶりの低水準を記録。労働需要が旺盛な一方、人手は依然不足し、物価高の主因である労働市場の需給逼迫が続く。

 

また平均時給の上昇率は前年比5.0%と高水準で、賃金圧力もインフレを押し上げる要因となった。マーケットでは米FRBによる積極的な利上げ継続への警戒感が強まった。
週明け、円は対ドルで一時、145円67銭まで下落。日本市場が祝日で休場の中、政府・日銀が前回の介入に踏み切る前につけた145円90銭を試した。

 

11月1、2日に開催されるFOMCでは4会合連続で75bpsの大幅利上げを実施するとの観測が強まり、金利差拡大からドル一強の流れは今後も続くと考えられる。

 

今週は13日に9月の米消費者物価指数を控え、前年比で9%超という激しいインフレの波に歯止めがかかるかどうかが注目となる。市場は今回の利上げサイクルでの短期金利の最高水準を「4.50-4.75%」まで織り込みつつあるが、結果次第では更なる上振れ余地が警戒される。その観測が台頭した場合には、短期的には市場の不安定さが高まる。

香港はハイテク株、半導体関連が軒並み下落

10日のアジア市場は日本、韓国を含め大半の市場が休場の中、中国市場は国慶節の連休明けから1週間ぶりに取引が再開された。

 

先週末に、米バイデン政権が半導体関連製品の中国への輸出規制を強化する措置を発表したことから、米中関係の軋轢が強まるとの見方がリスク回避ムードを高めた。香港市場はハンセン指数が3日続落となり前日比2.95%安で取引を終えた。

 

金利の上昇も要因となり、ハイテク株で構成されるハンセンテック指数は前日比3.98%安と大幅反落、指数設定以来の史上最安値を更新した。

 

構成銘柄は1銘柄を除いて全面安となり、スマホ部品の比亜迪電子(0285)は10.9%安、高性能データセンター開発の万国数拠(9698)は9.9%安、オンライン医療の京東健康(6618)は9.5%安と下げ幅が大きかった。

 

半導体関連も下落し、上海復旦微電子集団(1385)は20.2%安、半導体ファウンドリーの華虹半導体(1347)は9.4%安、晶門半導体(2878)は6.7%安と下げた。半導体製造装置市場で米国のシェアは4割と最も多く、今回の対中輸出規制を大幅に強化する厳格な規制は半導体の国産化を急ぐ中国には痛手となる格好となった。

 

中国本土市場は上海総合指数は前日比1.66%安の2,974.15まで下げた。約5ヵ月半ぶりに心理的節目の3,000を割りこんだ。半導体関連株が大幅安となったほか、幅広い銘柄に売りが波及し下げ幅を広げた。

 

国慶節休暇明けの中国市場では、景気悪化懸念が広がった。8日発表された9月の中国財新サービス業PMIは49.3と市場予想(54.4)、前月(55.0)のいずれからも大幅に下振れ、景気判断の分かれ目となる50も4ヵ月ぶりに割り込んだ。先立って発表された9月の財新製造業PMIでも2ヵ月連続で50割れしており、中国経済の不透明感が広がった。
 

 

また連休中、中国文化・観光部の発表によれば、国内観光客数は4億2,200万人に昇り、観光収入は2,872億元だった。一方、中国国家衛生健康委員会の発表によると、新型コロナウイルスの新規感染者(無症状感染者除く)が434人になった。感染者増加がみられたことで、三たび行動制限が打ち出されるとの懸念が高まった。今週末に開幕する中国共産党大会を控えて、警戒感が出ている。

 

 

 

 

長谷川 建一

Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>

 

 

 

 

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