会社の予算…「社長が決めるべき項目」と「社員が決めるべき項目」の違い【公認会計士が解説】

会社の予算…「社長が決めるべき項目」と「社員が決めるべき項目」の違い【公認会計士が解説】

会社の予算作成の方法として、社長が主導して決めていくトップダウンの方法、または各部署の社員が主導して積み上げていくボトムアップの方法が一般的です。そのようななか、KMS経営会計事務所の代表である公認会計士・税理士の川崎晴一郎氏は、社長が決めるべき予算とそうではない予算があるといいます。その違いとはなにか、みていきましょう。

予算の「重要数値」は社長が決めるべき

重要数値はどのようなものが考えられるでしょうか。賛否両論あると思いますが、私は「営業利益」1つでよいのではと思っています。

 

その理由は、次の通りです(成長フェーズでもともと赤字予定の場合は除きます)。

 

●会社にとって売上よりも利益が大事(借入金返済の原資になる、将来の不測の損失をカバーし会社存続に貢献する、株価上昇につながる重要な指標である、などのため)

 

●利益には色々な種類があるが、営業利益こそ経営者が社員とともに共有できる、経営管理上最も意味のある利益である

 

●経常利益も当期純利益も基本的に営業利益と従属関係にあるため、営業利益さえ追えば、それらの利益はおのずとついてくる

 

というわけで、社長は、まずは全社で獲得するべき営業利益の予算額を決めてしまいましょう。決め方は、その会社の置かれている立場によっていくつかあると思います。

 

借金の返済額からの逆算、1人あたり営業利益〇円×人数、前年対比〇%アップ、中期計画との整合性を考えた金額など、会社にとって稼ぎ出さなければならない金額をとりあえず置いてみましょう。

 

ちなみに、予算に設定する来期の利益は多ければよいというわけではありません。無理な利益増加は組織に歪をもたらすので成長しすぎない成長がよい、という会社もあるかと思います。

 

また、利益を獲得し続けなければ会社は存続できませんから、さらなる将来の利益増加のために来期の利益を犠牲にするかもしれません。

 

たとえば、広告投資をして会員を増やせば増やすほど将来の利益につながっていくようなビジネスモデルの場合、極論、お金をかき集めるだけかき集めて、赤字決算になろうが広告につぎ込んだって構わないわけです。

 

赤字を継続した後に莫大な利益を稼ぎ出すようになった会社が世の中にはたくさんあるのはご存知の通りです。ただ、そんなわかりやすいビジネスチャンスは滅多にないので、来たるチャンスに備え、蓄えられるときに蓄えるスタンスが一般的になるはずです。

 

中長期の成長を見据え、既存事業にも投資を行いつつ、いつか訪れるかもしれないビッグチャンスに備えた蓄え(利益確保)を別途するのです。社長はそんなことも考えながら、まずは全社で獲得すべき営業利益の予算を設定してみてください。

 

そして全社の営業利益を設定したら、各活動単位にその利益を按分してください。これにより予算の骨組みができます。

 

按分計算は、当期を含む過年度の実績を考慮するなどの方法でひとまず行ってみて、後はそれぞれの活動単位の責任者と交渉しながら、各活動単位の営業利益予算を決めてしまいましょう。

 

規模の大きい会社は活動単位の数が多くなるため、社長は、社長直下の活動単位(事業本部)のみの営業利益を決めて、それ以下の活動単位への按分は部下(事業本部長)に任せるのでもよいかもしれません。

 

おそらく売上を生み出さない活動単位(間接部門)を除き、ほとんどの活動単位で、本社費や共通費を負担しない状況では黒字予算となるのではないでしょうか。

 

いずれにしても、まずは社長主導で各活動単位の営業利益を固め、予算の骨組みとすることがポイントです。

 

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※本連載は川崎晴一郎氏の著書『秒速決算 ~スピーディに人を動かす管理会計で最高の利益体質をつくる!~』(技術評論社)より一部を抜粋・再編集したものです。

秒速決算

秒速決算

川崎 晴一郎

技術評論社

内容紹介(出版社より) 「月次決算待ちだった経営者が、末端部門の数値までもタイムリーに把握できるようになる」 「儲かる仕事を見定め、社内リソースを適時配分することがスムーズになる」 「経営陣と経理のものだった数…

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