予算の「重要数値」は社長が決めるべき
重要数値はどのようなものが考えられるでしょうか。賛否両論あると思いますが、私は「営業利益」1つでよいのではと思っています。
その理由は、次の通りです(成長フェーズでもともと赤字予定の場合は除きます)。
●利益には色々な種類があるが、営業利益こそ経営者が社員とともに共有できる、経営管理上最も意味のある利益である
●経常利益も当期純利益も基本的に営業利益と従属関係にあるため、営業利益さえ追えば、それらの利益はおのずとついてくる
というわけで、社長は、まずは全社で獲得するべき営業利益の予算額を決めてしまいましょう。決め方は、その会社の置かれている立場によっていくつかあると思います。
借金の返済額からの逆算、1人あたり営業利益〇円×人数、前年対比〇%アップ、中期計画との整合性を考えた金額など、会社にとって稼ぎ出さなければならない金額をとりあえず置いてみましょう。
ちなみに、予算に設定する来期の利益は多ければよいというわけではありません。無理な利益増加は組織に歪をもたらすので成長しすぎない成長がよい、という会社もあるかと思います。
また、利益を獲得し続けなければ会社は存続できませんから、さらなる将来の利益増加のために来期の利益を犠牲にするかもしれません。
たとえば、広告投資をして会員を増やせば増やすほど将来の利益につながっていくようなビジネスモデルの場合、極論、お金をかき集めるだけかき集めて、赤字決算になろうが広告につぎ込んだって構わないわけです。
赤字を継続した後に莫大な利益を稼ぎ出すようになった会社が世の中にはたくさんあるのはご存知の通りです。ただ、そんなわかりやすいビジネスチャンスは滅多にないので、来たるチャンスに備え、蓄えられるときに蓄えるスタンスが一般的になるはずです。
中長期の成長を見据え、既存事業にも投資を行いつつ、いつか訪れるかもしれないビッグチャンスに備えた蓄え(利益確保)を別途するのです。社長はそんなことも考えながら、まずは全社で獲得すべき営業利益の予算を設定してみてください。
そして全社の営業利益を設定したら、各活動単位にその利益を按分してください。これにより予算の骨組みができます。
按分計算は、当期を含む過年度の実績を考慮するなどの方法でひとまず行ってみて、後はそれぞれの活動単位の責任者と交渉しながら、各活動単位の営業利益予算を決めてしまいましょう。
規模の大きい会社は活動単位の数が多くなるため、社長は、社長直下の活動単位(事業本部)のみの営業利益を決めて、それ以下の活動単位への按分は部下(事業本部長)に任せるのでもよいかもしれません。
おそらく売上を生み出さない活動単位(間接部門)を除き、ほとんどの活動単位で、本社費や共通費を負担しない状況では黒字予算となるのではないでしょうか。
いずれにしても、まずは社長主導で各活動単位の営業利益を固め、予算の骨組みとすることがポイントです。