北朝鮮の弾道ミサイルは脅しなのか?
先日、私は知人から次の質問を受けました。
「北朝鮮がミサイルを撃ってきますけど、あんな貧しい国で、高度な技術はあるんですか? 単なる”こけおどし”ですよね? どうせ当たらないでしょ?」
と。私はこう答えました。
「”こけおどし”ではありませんよ。残念ながら技術は相当高い。当たらなきゃいいんだけど、当たっちゃう。だからミサイル防衛はしっかりやらないといけないんです」
日本もアメリカも「ミサイル防衛」には最大限の努力をしています。しかし万全とは言えません。「防衛するだけ」には限界があるからです。後で話しますが、1発の弾道ミサイルなら撃ち落とせるでしょう。しかし同時に5発6発きたら、パーフェクトに撃ち落とすのはかなり難しい。すでに日本を射程に入れた150発以上が、いつどこに飛んでくるのかは、わからないのです。
2016年9月5日。北海道の奥尻島沖に3発の短距離弾道ミサイル「スカッドER」が落下しました。その正確性は衝撃的でした。これを機に、政府の認識も変わりました。防衛省の評価は「ほぼ同じ地点に落ちた」というものだったからです。
推定飛行距離はおよそ1,000キロ。東京から鹿児島県までの距離です。その距離を飛ばし、同じ地点に落とす技術を獲得しました。その瞬間から北朝鮮製のスカッドやノドンは、「差し迫った脅威」になったのです。
奇くしくもこの日、中国の杭州ではG20(20ヵ国・地域)の首脳会議が開催されていました。北朝鮮の平壌から杭州までは1,100キロほど。首脳会議の会場は射程圏内なのです。北朝鮮の真意はわかりませんが「その場にぶち込めるぞ」という脅しにも取れます。
北朝鮮は巡航ミサイル(飛行機のような翼をもって飛ぶ)や、大陸間弾道ミサイル(ICBM/1万キロの長距離を射程にする)、さらには「低軌道・変則軌道」の短距離ミサイルなどを開発し、飛翔実験を次々と成功させています。「どうせ当たらない」などと侮ることは、到底できないのです。
佐藤まさひさ
参議院自民党国会対策委員長代行
自民党国防議員連盟 事務局長