(写真はイメージです/PIXTA)

立ち退きを要求しても、賃借人に拒否されることがあります。その場合にはどのように対応すればよいでしょうか? 立ち退き拒否が認められた事例とともに、立ち退き料の請求方法を不動産法務に詳しい森田弁護士がわかりやすく解説します。

賃貸でも立ち退きの拒否はできる?

アパートの部屋や一棟の建物を貸しており、その部屋や建物から賃借人に立ち退いてもらう場合には、建物が老朽化して倒壊の危険性があるなどの正当事由が必要となります。

 

大家側の都合で、一方的に出て行かせることはできません。なぜなら、建物の賃借人は、借地借家法という法律で強く保護されているためです。そのため、大家側がいくら立ち退いて欲しいと考えていても、賃借人が立ち退きを拒否して出て行かない可能性があるでしょう。この場合、立ち退いてもらうことについて正当事由があると認められれば、最終的に裁判となった際に、強制的に立ち退かせることが可能です。

 

ただし、正当事由が認められるためのハードルは非常に高いため、まずは賃借人との交渉によって解決を図ることが原則となります。立ち退いてもらうための事情が弱い場合には、これを立退料の支払いで補完することが一般的です。

 

正当事由がない場合

立ち退き請求に正当事由がないと判断されれば、最終的に裁判となった際に、立ち退きが認められない可能性が高いでしょう。そのため、正当事由がない場合には、賃借人との立ち退き交渉がより重要となります。賃借人と誠実に交渉し、賃借人が納得できる条件を提示することで、交渉をまとめる必要があります。

賃借人が立ち退きを拒否する主な理由

大家が立ち退きを申し入れた際、賃借人が立ち退きをすんなり受け入れるとは限りません。では、賃借人が立ち退きを拒否する理由として、どのようなものが考えられるのでしょうか? 立ち退きを拒否する主な理由を3つ紹介します。

 

現在の物件が気に入っている

賃借人がいまの物件を気に入っている場合には、立ち退きを拒否される可能性があります。気に入っている理由はさまざまで、たとえば次のようなケースがあるでしょう。

 

・日当たりや物件の作り自体が気に入っている

・場所などの条件に対して、賃料が値ごろである

・勤務先や最寄り駅など日常的に出向く場所から近く、場所がよい

・親類が近くに住んでいる

 

立ち退き拒否がこのような理由によるものであれば、賃借人が重視するポイントを踏まえた転居先のあっせんや紹介をすることで、交渉がまとまる可能性があります。

 

転居の費用や手間をかけたくない

引越しをするには、引越業者への支払いや引越し先物件への礼金の支払いなどで、費用がかかります。これらの出費を避けたいとの理由で、立ち退きを拒否する場合があるでしょう。

 

この場合には、これらの費用を立退料として支払う旨を提案することで、納得してもらえる可能性があります。引越しをする際には荷造りが必要となるなど、引っ越し作業自体に負担がかかります。また、住民票の異動や運転免許証の書き換えなど、さまざまな手続きも必要となるでしょう。このような手間を嫌がり、立ち退きを拒否することも考えられます。この場合も、かかる手間を補填する形で立退料を上乗せする提案をすることにより、交渉が成立する可能性があります。

 

新たな入居先が見つかるか不安を感じている

賃借人が高齢である場合などには、新たな物件をみつけることが容易ではない可能性があります。高齢者だからといって大家にとって一律にリスクが高いわけではないものの、高齢であることを理由に入居を断られるケースはいまだに少なくないためです。そのため、新たな転居先がみつかるかどうかが不安で、立ち退きを拒否する場合もあるでしょう。

 

このような場合には、転居先を紹介したりあっせんしたりすることで、交渉が成立する可能性があります。ただし、入居者が高齢である場合には住み慣れた場所を離れたくないという理由も相まって交渉が難航する可能性があるため、より注意深く交渉を進めることが必要です。

 

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