(写真はイメージです/PIXTA)

後継者不在を理由に、他社に企業を買い取ってもらう「事業承継型M&A」を検討する企業が増えています。今回は「事業承継型M&A」の基本やメリット・デメリットなどについて、事業承継に詳しいAuthense法律事務所の西尾公伸弁護士が解説します。

 

家族外承継の割合が増加している

帝国データバンクの「全国企業「後継者不在率」動向調査(2021年)」によれば、2021年の事業承継では、「同族承継」による割合が38.3%であり、もっとも多くなっています。 しかし、同族承継の割合は2017年には41.6%であり、年々減少傾向にあります。※1

 

一方、内部昇格やM&A、外部招聘はともに年々微増しており、なかでも買収・出向・分社化の合計値である「M&Aほか」は、2021年において全体の17.4%を占めています。

 

事業継承型M&Aが増加している背景には、後継者が不在である企業の割合が高止まりしている現状があるといえるでしょう。 実際に、帝国データバンクの調査によれば、2021年における後継者不在企業の割合は61.5%にものぼります。※1

 

後継者不在企業の割合は2017年の調査結果である66.5%から徐々に減少傾向にはあるものの、決して低い数値であるとはいえません。

 

1 帝国データバンク:特別企画:全国企業「後継者不在率」動向調査(2021 年) 

事業継承型M&Aのメリットとリスク

事業承継型M&Aを検討する際には、この手法のメリットとリスクをそれぞれ知っておきましょう。 事業承継型M&Aの主なメリットは、次の3点です。

 

従業員の雇用や企業ブランドを守れる可能性が高い

後継者候補のいない企業が事業承継型M&Aを行うことで、従業員の雇用を守れる可能性が高くなります。特に、比較的高齢の従業員が多い場合には、転職することも容易ではないため、雇用の継続は最優先の課題となることでしょう。

 

また、M&Aにより事業を継続させられることで、築き上げた企業ブランドを守ることができる可能性が高くなる点も大きなメリットのひとつです。

 

株式売却で利益を得られる

事業承継型M&Aを行うことで、株主である経営者が株式の売却対価を得ることが可能となります。 経営者としてこれまで努力をしてきた成果が報われる他、まとまった資金を得られることで、相続税対策の原資や納税資金対策などに充てることもできるでしょう。

 

経営者の連帯保証を外せる可能性が高い

経営者は、会社が資金を借り入れるに際して、連帯保証をしている場合が少なくありません。 M&Aを行って経営者から外れることで、この連帯保証を外してもらえる可能性が高いでしょう。ただし、買い手企業の信用状況によっては連帯保証が外れない可能性もゼロではありませんので、あらかじめ借入先の金融機関に相談しておくとよいでしょう。

 

リスク

事業承継型M&Aでは、必ずしも希望の買い手企業が現れない可能性がある点に注意しなければなりません。 いくら売却をしたいと考えていても、買い手がいない以上は売却することはできないためです。

 

また、従業員のなかにはM&Aに対してなんとなく否定的な印象や不信感を抱いている人がいる場合もあり、離職者が増加する可能性もあるでしょう。 そのため、M&Aを行う場合には、従業員に対して丁寧に説明する必要があります。

 

さらに、承継の完了までに時間がかかる傾向があることも、事業承継型M&Aのリスクのひとつといえます。 M&Aへ向けての交渉のほか、企業の経営ノウハウや技術を引き継ぐにあたって時間を要することが多いためです。

 

次ページ「事業継承型M&A」の進め方

本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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