発信者情報開示には高い壁が…どうすればいい?
しかしながら、マッチポンプ商法に対して発信者情報開示請求を行うには、大きな障害があります。
1点目は、マッチポンプ商法を行う業者も、発信者情報開示請求がなされるリスクを理解しているため、口コミに投稿される内容が、名誉毀損に該当し得ない、または名誉毀損に該当するというには疑わしい内容となる場合が多いことです。
たとえば、「料理がまずい」などの抽象的かつ主観的な感想のみを投稿することが多く行われています。
2点目は、発信者情報開示請求のタイムリミットとの関係です。
発信者情報開示を受けるためには、投稿者のアクセスログを経由プロバイダに保存してもらう必要があります。しかし、一般的には、アクセスログが保存される期間は、投稿時から3ヵ月~6ヵ月程度とされます。
マッチポンプ商法が行われる場合には、名誉毀損該当性が疑わしいことも多いため、発信者情報開示請求の裁判手続の審理に時間がかかることが予想されます。
そのため、発信者情報開示のタイムリミットに間に合わないことも、往々にしてあり得ます。
そこで、正攻法である発信者情報開示請求が難しい場合には、あえてマッチポンプ業者に依頼して記事を削除させることで、その事実を1つの証拠として、マッチポンプ業者に対して、損害賠償請求訴訟を提起する可能性が考えられます。
この方法をとる場合の留意点は、以下の2つです。
2.業者には記事の「非表示」ではなく、記事の削除をさせること
先に説明したとおり、削除請求による記事削除には、それなりの時間がかかります。また、裁判所に削除命令を出してもらう方法を採るのは、事実上、弁護士でなければ困難です。
その一方で、投稿者が自ら投稿した記事を削除することは一般に可能です。
マッチポンプ業者は、「最短即日」などと、削除までの期間が短いことを宣伝文句にしていることが多くあります。
以上のことを踏まえ、業者がある記事を極めて短期間で削除した事実から、当該業者自身(またはその関係者)が当該記事を投稿したことを推認することができ、これが損害賠償請求の1つの証拠となり得ます。
ただし、マッチポンプ業者のなかには、記事の削除ではなく「非表示」を謳っているものもあり、あくまでも「非表示」ではなく記事の削除をさせることが必要です。
まとめ…弁護士に依頼するメリット
ここまで、民事上の名誉毀損や口コミサイトの特性、マッチポンプ業者などについてご説明してきました。こういった名誉棄損やマッチポンプ商法であることが疑われる低評価の口コミを投稿されてお悩みの場合には、1度弁護士に相談されることをおすすめします。
いわゆるインターネット上の誹謗中傷という分野は、高度な法的知識や経験が結果に大きく影響します。
また、この分野は、日々の対策やなにかあったときの素早い対応が非常に重要ですので、顧問弁護士をつけるという選択肢を検討するのもよいでしょう。
西尾 公伸
Authense法律事務所
弁護士
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
■恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ
■47都道府県「NHK受信料不払いランキング」東京・大阪・沖縄がワーストを爆走