(写真はイメージです/PIXTA)

中小企業の経営者にとって事業承継は悩みのタネです。 今回は、事業承継の基本とともに、主な4つのパターンについて、企業法務に詳しいAuthense法律事務所の西尾公伸弁護士が解説します。

「事業承継」のキホン

事業承継とは、これまでの経営者が経営の第一線から退き、次世代などへ事業を引き継ぐことを指します。親族へ承継するケースのほか、従業員へ承継するケースなどさまざまな手法が存在します。

 

「事業“承継”」と「事業“継承”」との違い

事業「承継」と似た言葉に、事業「継承」があります。

 

事業承継と事業継承とに、明確な区別はありません。ただし、「承継」は一般的に事業や理念などを包括的に引き継ぐときに使われることが多い一方で、「継承」は権利や財産などを引き継ぐ意味合いで使われることが多いようです。

 

「事業“譲渡”」との違い

事業譲渡とは、事業承継のなかでも特に、他社へ事業を売り渡すことです。会社全体を売却する場合もあれば、一部の事業のみを切り出して譲渡する場合もあります。

 

「事業譲渡」と対比して「事業承継」の言葉を使う場合には、事業承継は親族内承継や従業員への承継などに限定して使われることが多いでしょう。

 

「合併」との違い

合併とは、2つ以上の会社が1つの会社となることを指します。合併にはさまざまな形態がありますが、事業承継に際して「合併」という言葉が使われる場合には、自社が他社に吸収合併されることが前提となっていることが多いでしょう。

「事業承継」の対象になる資産

一般的に、経営者には定年がありません。また、長年最前線で働いてきたことから、自己の判断能力や体力に自信がある人も少なくないでしょう。そのため、事業承継について検討を始める時期が遅くなってしまいがちです。

 

経営者が事業承継を考え始めるきっかけとしては、自身の病気などで体力の衰えを感じた際や、周囲の同年代の経営者から承継についての話を聞いた場合などが多いといえます。

 

事業承継の対象になる主な資産には、次の3つが存在します。漏れなく承継を行うためには、これらそれぞれについて次世代へと引き継ぐ方法を検討していかなければなりません。

 

1.もっとも重要な「自社株式」

自社株式は、事業承継においてもっとも重要となる資産です。

 

「さほど儲かっていないのだから、自社株に価値などない」と考えている経営者は少なくありません。しかし、儲かっていないからといって株式の評価額が低いとは限りません。自社株の評価は、利益額のみをベースに算定されるわけではないためです。そのため、たとえ近年は儲かっていなかったとしても、会社が遠い昔に買った土地を保有している場合などには、自社株に思わぬ高額な評価が付くこともあります。

 

2.会社に貸している「土地」や「建物」

経営者は、自己名義の土地や建物を会社に賃貸していることが少なくありません。

 

この土地や建物がないと事業が立ち行かなくなる可能性がありますので、これらの不動産も、適切に次世代へ承継することが必要です。

 

3.会社への「貸付金」

特に中小企業では、経営者自身のお金を会社に貸しているケースが散見されます。また、特に返済を求めるつもりはなく、単なる「帳簿上の数字」だと認識していることも少なくありません。

 

実際に、本人が唯一の株主であり代表取締役である限り、これが問題となるケースはほとんどありません。しかし、いざ事業承継をしようとすると、これが障害となる場合があります。なぜなら、会社への貸付金は個人の資産に該当するため、この貸付金を次世代に引き継げば、相続税の対象となるからです。

 

また、相続で貸付金が相続人間に分散すれば、後継者である相続人以外の相続人から、早期の返済を求められるかもしれません。

 

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本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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