(※写真はイメージです/PIXTA)

筋トレは通常、週に2回〜3回で十分で、それ以上やっても効果はないといわれています。多いときは週に6日となると、効果がないどころかオーバートレーニングでむしろ悪影響。しかしトレーニングすること自体が楽しいといいます。還暦から筋トレを始めた城アラキ氏が著書『負けない筋トレ 還暦から筋トレにハマったら、「肉体」と「人生」が激変した!』(ブックマン社)で解説します。

場違いな真剣さは周囲から浮いて恥ずかしい

■トレーニング事始め

 

人が聞けば、笑うほど大げさな覚悟で筋トレを再開したかのように見えるが、ここには少々のタイムラグがある。手術をして再びジムに通い始めたのは63歳のときだ。この少し前に家庭の事情(ま、俗にいう老老介護ですな)で東京から車で3時間ほど、妻の実家があるH市に移り、東京との二重生活になっていた。どちらかというとH市の方が生活の基盤だ。

 

最初はH市のプールもある総合型ジムに通っていた。この頃はまださほど真剣ではなかった。真剣になりきれなかったのには理由があった。

 

■「猫なで声」のトレーニングならいらん! 

 

実は、30代後半の頃、生まれて初めてスキーを経験してハマった。何事も道具立てから入るから、最初に新潟のスキー場に部屋を買った。時代もそういうお調子づいた時代だったのだ。プライベートのコーチを頼んで斜面にポールを立て、朝から晩まで本人としては必死に頑張った。と、ある日コーチがニコニコ笑って言うのである。

 

「△△さん(私の本名だ)。まぁお歳もお歳ですし、膝も硬くなっているのでケガしないように無理せずいきましょう」

 

これにはキレた。なんだと〜。お前はそんなふうに思っていたのか! 

 

私はね、コースを外れて藪に突っ込もうが、勢い余って曲がりきれずに転倒し、腕の一本や二本折っても(いやウソですけど)構わぬ覚悟でやっていたのに。なんだその「猫なで声」は!

 

人が最も傷つくのは誰かに自分の真剣さを笑われたときだ。腹が立つより己が惨めに思える。他者に対する最大の侮蔑は同情だ。私は同情されたいわけじゃない。いっぺんにやる気が失せ、スキー道具一式マンションごと友達に売り飛ばした。

 

そして、今回のジムでは歳を笑われたわけではない。むしろ逆なのだが……。

 

■「お兄さん頑張るね〜」の脱力

 

これも後に述べるが、総合型ジムの昼どきはさながらお年寄りのサロンだ。マシンをやる人はいてもバーベルやダンベルがあるフリーウエイトのスペースはガラガラ。そんな昼どき。本日は、苦しくて誰もが避けたい「足トレ」の日だ。「ヨシッ!」と、ようやく気合いを入れ、集中を高めてラックに近づく。

 

シャフトをくぐって担ごうとしたその瞬間だ。トントンと誰かが肩を叩くではないか。ビックリして振り返る。「オニーサン、いつも頑張るねぇ〜」とおばあちゃんがニコニコ笑って立っているじゃないか。

 

「い、いえ。そんな、とんでもないです」と意味不明なことを言いながら、心も体も思いっきりヘナヘナと脱力して立ち直れない。場違いな真剣さというのも周囲から浮いて少々恥ずかしいもんだ。

 

このジムと並行して、パーソナルトレーニング主体のジムにも通い出すが、まだまだ本気には少し遠かった。この頃の気分としては、原稿を書いた後の肩こり予防程度のトレーニングだった。

次ページ自主トレ、パーソナルの2本立て

本連載は、城アラキ氏の著書『負けない筋トレ 還暦から筋トレにハマったら、「肉体」と「人生」が激変した!』(ブックマン社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

負けない筋トレ

負けない筋トレ

城 アラキ

ブックマン社

『ソムリエ』『バーテンダー』など、数々のお酒にまつわる傑作漫画の原作を手掛けてきた著者は自他ともに認める酒呑みであり、美食家だ。3日に一度は暴飲暴食。仕事柄、1日の歩数が500歩なんてザラだった。運動もしない日々を…

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