食事もトレーニングと同じくらい重要
■ボディメイクとダイエットの違い
最初にダイエットとボディメイクの違いを簡単に説明したい。ダイエット=痩身が目的のとき、メインとなるのは食事管理で、運動はあくまで補助的だ。その運動も、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動が主体。ただし、最近では女性も普通に筋トレをやるようになって、この事情は少し変わりつつある。
これに対し筋トレによるボディメイクは、筋肥大と除脂肪=筋肉を大きくしつつ脂肪をそぎ落とし、筋肉の細部まで美しく見せるというのが目的だ。痩せるためではなく、脂肪を落とすために食事コントロールがある。ボディメイクでは体重の増減はあまり気にしない。
とはいえ、実際には筋肉を増やしつつ、脂肪は極力減らしたいので、食事もトレーニングと同じくらい重要になる。本連載でも「運動編」と「食事編」と二つに分けている。
ボディメイクとは、あくまで自分の意思と力だけで自分自身を変えることを意味する。飯を食わないのも、確かに意思には違いない。だがこの結果痩せた=変わったとしても、これを絞ったとは言いづらい。
やっぱり単にやつれたと言われそうだ。どちらがいいとか、どちらが健康的かはあまり意味がない。その目的が最初から少々違うとだけ言っておきたいのだ。
大事なのは「変わる」ことと「変える」ことの違い。そう「変化の意味」なのだ。
■筋トレとは「盆栽」である
トレによるボディメイクにいちばん近いのは「盆栽づくり」ではないかと思った。ま、実際に栽培したことがないから、これはあくまで想像だけど。明治神宮では毎年、盆栽展という催しがあって、ランニング途中にたびたび覗いた。
鑑賞ポイントなどまったくわからないが、頂点に輝く総理大臣賞はもちろん、上位に入賞した盆栽はまず全体のボリュームが豊かだ。筋肉もボリュームがある方がなんと言っても迫力がある。生まれ持った骨格、肉付きに左右されるのは盆栽も肉体も同じだ。
次に、細部にまで隙がない。盆栽も刈り込まれるところは奥まで1㎜の狂いもなく揃えてキチンと刈り込まれている。全体の陰影も深い。さながらミニチュアの森のように深淵だ。ちなみに筋肉のカット=彫り込みを深くするのは減量とトレーニング次第だ。
盆栽も日に当て(そういえばコンテストビルダーも黒々と焼き上げるが、これはカットを際立たせるため)、水や肥料を与え(ビルダーならプロテインだな)、慈いつくしむ。
ついでに、そのこと自体には木としての(体としての)有用性は何も生まないところも似ている。盆栽は防風林のようにそこに立ちはだかって、風を防ぐわけじゃない。伐採後に建築用材として役に立つわけでもない。
ボディビルダーもその筋力を実用に活かすつもりはさらさらない。
世間はそれを無駄な努力というだろうが、盆栽だって同じじゃないか。自然な木を人工的に、人の意思を持って変える。自分ひとりだけが嬉しい。役には立たぬが心は豊かにしてくれる。これぞ「無用の用」である。
ただし「ね、見て見て。この肩のところ、三角筋ってホントに3つに分かれてるでしょ」と、誰彼構わず無理矢理つかまえ、思いっきり力んで肩を見せるのはやめた方がいい。普通の人は盆栽以上にあなたの肩にはまったく興味はない。
ということで……筋トレには3つの「変化」があると思っている。以下、少し詳しく説明する。