「なぜあなたたちは私たちにするなということをしているのですか?」…世界の国家元首の前で問いかけた12歳の少女

「なぜあなたたちは私たちにするなということをしているのですか?」…世界の国家元首の前で問いかけた12歳の少女
(※写真はイメージです/PIXTA)

1970年に「生命科学」という分野の創出に関与し、早稲田大学、大阪大学で教鞭をとった理学博士の中村桂子氏。生物を知るには構造や機能を解明するだけでなく、その歴史と関係を調べる必要があるとして「生命誌」という新分野を創りました。そして、「歴史的文脈」「文明との相互関係」も見つめ、科学の枠に収まらない知見で生命を広く総合的に論じてきました。科学者である彼女が、年齢を重ねた今こそ正面から向き合える「人間はどういう生き物か」「人として生きるとは」への答えを、著書『老いを愛づる』(中公新書ラクレ)として発表。自身が敬愛する各界の著名人たちの名言を交えつつ、穏やかに語りかける本書から、現代人の明日へのヒントとなり得る言葉を紹介します。

地球環境破壊を止めない大人に対するグレタさんの憤り

なぜあなたたちは

私たちにするなということをしているのですか

 

                        (グレタ・トゥンベリの言葉)

 

グレタ・トゥンベリという名前はお聞きになったことがおありですよね。今19歳のスウェーデンの女の子。いつもちょっと恐い顔をしていますけれど、大事なことを言っていますから、ちょっと彼女の言葉に耳を傾けてみましょう。

 

グレタさんが活動を始めたのは今から3年半前、15歳の時です。異常気象、もう少し広く考えるなら地球環境問題に対して大人たちが無関心すぎることに憤り、国会議事堂前で抗議活動をしました。

 

異常気象の原因は人間活動による膨大な量の二酸化炭素の排出なのに、経済活動にばかり目を向けている大人は、一向に問題解決をしようとしないというのが彼女の憤りのもとでした。

 

二酸化炭素は、石炭や石油などを燃やした煙に含まれていますので、大量生産・大量消費の社会で、工場から出る煙が増えるとともに大気の中にどんどん増えてきました。

 

鉄道、次いで自動車、さらにはジェット機が飛び、とても便利になりましたが、そこからも二酸化炭素が出ます。困ったことに、二酸化炭素は温暖化の原因になります。

 

事実、日本でも、本州で5月から気温が30度を超す日があるとか、一日に一月(ひとつき)分の雨が降りましたというようなとんでもない豪雨があるなど、何かおかしいと誰もが思う日が続いています。

 

でも普通は、地球環境問題などという大きな事態は私一人の力でどうなるものでもないしと考えてしまいます。一人で声をあげたって仕方がないと諦めてしまいがちです。

 

しかも、世界のリーダーの中には、温暖化は私たちが出している二酸化炭素のせいではないという人までいました。こういう時は、科学の力で誰もが納得するデータを出していくのが現代社会のやり方ですが、困ったことに気候はとても複雑で、科学で答えが簡単に出せるものではないのです。

 

自然は、科学だけでなく、私たち人間の感覚で捉えることも大事です。農業を長い間続けてきたお年寄りが、雲行きでお天気をみごとに予測するのに驚かされることがあります。勘の大切さです。

 

でも勘では、世界のリーダーを説得するのは難しく、答えのないままに時が経ってしまいました。

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老いを愛づる

老いを愛づる

中村 桂子

中公新書ラクレ

白髪を染めるのをやめてみた。庭掃除もほどほどに。大谷翔平君や藤井聡君にときめく――自然体で暮らせば、年をとるのも悪くない。人間も生きものだから、自然の摂理に素直になろう。ただ気掛かりなのは、環境、感染症、戦争、…

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