ロシアは大丈夫か?戦費総額は国家予算の280倍の太平洋戦争 (※写真はイメージです/PIXTA)

太平洋戦争は日本の経済力を無視した戦争であり、そもそも遂行が不可能なものでした。通常の手段でこの戦費を調達することはできず、戦費のほとんどは日銀の直接引き受けによる国債発行で賄われました。経済評論家の加谷珪一氏が著書『戦争の値段 教養として身につけておきたい戦争と経済の本質』(祥伝社黄金文庫)で解説します。

国家予算の280倍のお金をつぎ込んだ戦争

有事になると状況は大きく変わってきます。現代では大国間の全面戦争というケースはほとんどありませんが、太平洋戦争以前は、日本を含めて各国とも大規模な戦争をかなりの頻度で繰り返していました。大規模な戦争ということになると、その費用は平時と比べてケタはずれに大きなものとなります。

 

■比較的安上がりだった日清戦争と日露戦争の戦費

 

日本は、明治維新以後、日清戦争、日露戦争、太平洋戦争という3つの大きな戦争を行っています。これら3つの戦争ではどのくらい経費がかかったのでしょうか。

 

明治維新後の日本にとって最初の大規模な戦争となった日清戦争の戦費は、当時の金額で約2億3000万円、日本にとってはじめての近代戦となった日露戦争の戦費は約18億3000万円でした(図)。

 

当時と今とでは物価水準が大幅に異なっていますから、金額を直接比較することはできません。また政府がどの程度の支出を行うのかについても時代によって変化しますから、国家予算との比較も参考となる程度でしょう。戦争にかかったコストを適切に比較するには、やはりGDPとの対比がもっとも有効です。

 

日清戦争開戦当時のGDP(当時はGNP)は13億4000万円だったので、戦費総額のGDP比は0.17倍でした。現在の日本のGDPは約500兆円ですから、0.17倍という数字を当てはめると85兆円という金額になります。現在の国家予算は約100兆円ですから、国家予算に匹敵する金額を1つの戦争に投じた計算となるわけです。

 

一方、日露戦争の開戦当時のGDPは約30億円だったので、戦費総額のGDP比は0.6倍ということになります。日露戦争は、日清戦争の時よりも、はるかに戦費負担が大きくなりました。現在の金額に当てはめると、300兆円ということになりますから、国家予算の3年分です。

 

日清戦争から10年後に遂行された日露戦争は、発達したグローバル経済を背景とした、日本にとってはじめての近代戦となりました。日清戦争とは異なり、最新鋭の艦船やハイテク兵器が多数投入されたため、戦争遂行期間がほとんど同じであるにもかかわらず、日清戦争の8倍もの戦費を必要としたわけです。

 

これが太平洋戦争になると根本的にケタが変わってきます。

 

太平洋戦争(日中戦争を含む)の名目上の戦費総額は約7600億円。日中戦争開戦時のGDPは228億円なので、戦費総額のGDP比率を計算すると、何と33倍に、国家予算に対する比率では280倍という天文学的数字となります。

 

加谷珪一著『戦争の値段 教養として身につけておきたい戦争と経済の本質』(祥伝社黄金文庫)より。
加谷珪一著『戦争の値段 教養として身につけておきたい戦争と経済の本質』(祥伝社黄金文庫)より。

 

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    経済評論家

    仙台市生まれ。1993 年東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP 社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は、ニューズウィークや現代ビジネスなど多くの媒体で連載を持つほか、テレビやラジオなどで解説者やコメンテーターなどを務める。
    主な著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『脱日本入門』(文藝春秋)、『日本は小国になるが、それは絶望ではない』(KADOKAWA)、『日本はもはや後進国』(秀和システム)、『ポスト新産業革命』(CCC メディアハウス)、『戦争の値段』(祥伝社黄金文庫)などがある。
    オフィシャルHP:http://k-kaya.com/

    著者紹介

    連載お金の流れから読み解く「戦争と経済の本質」

    本連載は加谷珪一氏の著書『戦争の値段 教養として身につけておきたい戦争と経済の本質』((祥伝社黄金文庫)より一部を抜粋し、再編集したものです。基本的に書籍が出版された2016年当時の記述となっており、各種統計の数字は2016年時点のものです。国際情勢が変化し、追記が必要な部分については、著者注として補足しています。

    戦争の値段 教養として身につけておきたい戦争と経済の本質

    戦争の値段 教養として身につけておきたい戦争と経済の本質

    加谷 珪一

    祥伝社

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