(※写真はイメージです/PIXTA)

インターネットとSNSの普及により、真実や事実のみならず、偽情報や誤情報も流布され、私たちがそれらに踊らされる事例が数多く発生するようになりました。それは何を意味しているのでしょうか。元・陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏が著書『日本はすでに戦時下にある すべての領域が戦場になる「全領域戦」のリアル』(ワニプラス)で解説します。

平時における戦いを重視する中国やロシア

▶中ロの影響工作とデュープス

 

SNSを使用することにはプラスもあればマイナスもある。

 

プラスの点は、とにかく便利である。世界中に情報を発信できるし、世界の人たちと交流ができ、多様な情報を入手することができる。どのような影響工作がおこなわれているのかを研究する立場としては、これほど便利なツールはない。

 

一方、マイナスの点は、悪意ある者から狙われてアカウントが乗っ取られたり、個人情報などを窃取されたりするリスクである。とくに私のように実名で顔写真も公開した状態でSNSを使うことにはリスクがあり、それなりの覚悟が必要である。

 

SNSを使っていると、米国の大統領選挙や新型コロナのワクチンをめぐりSNS上で流布されている偽情報を簡単に信用し、その偽情報を自らも拡散する人たちの多さに驚かされる。私はこれらの人たちは、中国やロシアのデュープス(dupes)ではないかと思っている。

 

ここでいうデュープスとは、「明確な意思をもって中国やロシアのために活動しているわけではないが、知らず知らずのうちに中国やロシアに利用されている人々」のことだ。中国やロシアが流す偽情報を信用して、その情報をSNS経由で拡散する人たちがなんと多いことか。

 

中国やロシアなどの専制主義国家は、偽情報や誤情報を積極的に利用して影響工作を展開している。中国やロシアの影響工作の主たる目的は、米国などの民主主義国家の自由で民主的な体制に疑念を抱かせ、社会を分断し、混乱させることである。

 

中国やロシアは、平時における戦いを重視して目的を達成しようとしている。戦いには平時の戦いと有事の戦いがある。解放軍やロシア軍は、米国に戦争(=有事)を仕掛けて交戦するのは不利だと思っている。そこで平時における戦いを米国などの民主主義陣営に仕掛けているのだ。

 

平時の戦いのなかでは、政治戦、情報戦(とくに影響工作)、サイバー戦が有効であると評価され多用されている。

 

渡部 悦和
前・富士通システム統合研究所安全保障研究所長
元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー
元陸上自衛隊東部方面総監

 

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本連載は渡部悦和氏の著書『日本はすでに戦時下にある すべての領域が戦場になる「全領域戦」のリアル』(ワニプラス)より一部を抜粋し、再編集したものです。

日本はすでに戦時下にある

日本はすでに戦時下にある

渡部 悦和

ワニブックス

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