立ち退きに正当事由が必要な理由
借地や借家の立ち退き請求になぜ正当事由が必要とされるのでしょうか?
その理由は、土地や建物の賃貸借契約は、一般的には継続されることが前提となっているためです。
賃借人の立場で考えると、土地や建物を借りている場合、そこを生活の本拠としていたり事業の拠点としていたりする場合が大半でしょう。それにもかかわらず、貸主側の都合でいつ追い出されるかわからないとなれば、安心して生活や事業を営むことができません。
そのため、貸主側からの立ち退き請求には、原則として正当事由が必要とされているのです。
正当事由による立ち退き事例
ここでは、正当事由による立ち退きが認められた事例を紹介します。ただし、実際の事例に当てはめる際には、細かな事情の検討が必要です。
なお、似た事例で正当事由が認められたケースがあるからといって、事情が異なるケースでまで必ずしも認められるとは限りません。お困りの際には、あらかじめ弁護士ご相談ください。
事例1
築後40年を経過した共同住宅について、建て替えなどを理由とする賃貸借契約の解約申し入れにおける立退料の額をめぐって争われた事案です。
この事案では、引越料その他の移転実費と転居後の賃料と現賃料との差額の1、2年分の範囲内の額が移転資金の一部を補填するものとして認められるべきであるとされています(平成12年3月23日東京高裁)。
事例2
昭和4年頃に築造された木造3階建て共同住宅に関して、賃貸人(大家)が賃借人に対して無断改築などを理由として賃貸借契約を解除し、建物の明渡しなどを請求した事案です。
この事案では、無断改築などによる信頼関係破壊を理由とした解除は認められませんでした。そのうえで、大家からの立退料支払いを補完事由として斟酌し、解約申入れに正当事由が認められるとして明渡請求が認容されています(平成20年4月23日東京地裁)。
事例3
建物の老朽化に伴う建替えを理由に、賃貸人(大家)が賃借人に対して建物明渡を請求した事例です。
この事例では、建物の耐震性能の問題は震度5弱程度の地震でも人命を損ないかねないほどに深刻で、早急な対応が必要なことは明らかであるとされました。結果、人道的見地を理由として、立退料の支払いと引き換えに建物明渡請求が認容されています(平成25年6月14日東京地裁)。
事例4
賃貸人(大家)が賃借人などに対し、明渡しなどを求めた事案です。
この事案では、建物が竣工後50年以上を経ていて老朽化が相当に進行し、耐震性の点でも危険性を否定することができず、耐震補強をおこなうには相当の費用がかかるとの前提がありました。
そこで、不利益を一定程度補うに足りる立退料を支払うことによって正当事由が補完されるとして、311万円余の支払を受けるのと引き換えに明渡請求を認めています(平成24年11月1日東京地裁)。
事例5
これは、正当事由による立ち退き請求が認められなかった事例です。
賃貸人(大家)が賃借人に対して、建物が朽廃し倒壊する危険性が高いという正当の事由があるとして、賃貸借契約の解約を求めました。一方、賃借人は大家に対し、建物の倒壊の危険から免れるための通常の補修工事の実施を求めたものです。
その結果、東京地裁は賃貸借契約の解約の申入れの正当事由を否定し、賃貸人に補修工事の実施を命じました(平成22年3月17日東京地裁)。
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