(写真はイメージです/PIXTA)

賃貸物件オーナーの頭を悩ませる問題のひとつである「瑕疵物件」。ただ、所有する物件がいわゆる「ワケあり物件」になってしまったとしても、必ずしも次の入居者への告知義務が発生しないケースもあると、不動産法務に詳しいAuthense法律事務所の森田雅也弁護士はいいます。瑕疵物件の基本と告知義務が発生するケース・しないケースについて、森田弁護士が詳しく解説します。

賃貸における瑕疵物件の4類型

賃貸物件がいわゆる「瑕疵物件」となってしまうと、次の入居者募集に際しての障害となる可能性があります。 「瑕疵物件」に明確な定義はありませんが、一般的には、なんらかの問題や障害がある物件を指す場合が多いでしょう。瑕疵物件は、瑕疵の種類によって主に次の4つに分類されます。

 

1. 物理的瑕疵物件

物理的瑕疵物件とは、賃貸物件である建物自体やその敷地である土地自体になんらかの問題があるものを指します。 たとえば、次のような物件がこれに該当します。

 

•地盤沈下が起きて建物が傾いている

•土地が有害物質により汚染されている

• 耐震強度が不足している

• 雨漏りや水漏れが起きている

• 外壁がひび割れている

• 給排水管が詰まったり故障したりしている

• シロアリの被害に遭っている

• 建材にアスベストが使用されている

 

物件に物理的瑕疵が生じている場合には、相場どおりの賃料で賃貸することは困難でしょう。 問題を放置するとさらに被害が拡大しさらに入居者の募集が困難となるおそれがありますので、修繕をするなど早期の対応が不可欠です。

 

2. 法的瑕疵物件

法的瑕疵物件とは、なんらかの法的な不備を抱えている物件のことです。 たとえば、次のような物件がこれに該当すると考えられます。

 

• 建築基準法に違反している:建築確認を行うことなく違法な増改築を行った物件など

• 消防法に違反している:消防法で必要とされるスプリンクラーなどの設備を備えていない物件

 

仮に違法状態のままで物件を賃貸に供していた場合、地震による倒壊や火災による死傷事故などが起きてしまうと賃貸物件オーナーの責任が問われる可能性があります。 そのため、これらの瑕疵がある場合には、早期の改善が必要です。

 

3. 心理的瑕疵物件

心理的瑕疵物件とは、なんらかの事件や事故が起きたことにより、心理的に嫌忌されがちとなってしまった物件を指します。 なにを忌み嫌うのかは人によって異なるため一概にいえるものではありませんが、一般的には次のようなものがこれに該当する可能性が高いといえます。

 

• 自殺や他殺のあった物件

• 室内で人が死亡してから発見までに時間を要した物件

• 多くの人が知る事件の舞台となった物件

 

心理的瑕疵物件については、賃貸物件オーナー側には責任がない場合が大半です。 しかし、心理的瑕疵物件であると入居候補者が判断すれば賃料の下落は避けられず、賃貸物件オーナーにとって特に悩みとなる問題のひとつでしょう。 心理的瑕疵物件の告知義務については、後ほど詳しく解説します。

 

4. 環境的瑕疵物件

環境的瑕疵物件とは、多くの人が嫌悪する施設が近くにある物件です。 たとえば、次のような施設が嫌悪対象となることが多いでしょう。

 

• 墓地や火葬場、葬儀場

• 下水処理施設

• 刑務所

• 暴力団事務所

• ガスタンクや原子力発電所

• 風俗営業店や遊技施設

 

物件取得時には、周囲にこれらの施設がないかどうかを確認することが多いことでしょう。 しかし、物件取得時にはなかったこれらの施設が、あとから出現してしまう可能性は否定できません。

 

これらすべての施設を避けることは困難ですが、たとえば遊技施設や風俗営業店などは建築してはならない地域が法令で定められています。 そのため、どうしても避けたい施設がある場合には、その施設が建つ可能性が低い地域で物件を取得することを検討するとよいでしょう。

 

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次ページ告知義務が発生しないケースとは?

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