「奨学金は政府が肩代わりすべき!返済義務はない」平均年収ほどの債務も無視…タイ政府、学生ローン基金が講じた厚遇   『Thai PBS World』より

タイの公共放送局『Thai Public Broadcasting Service』 (Thai PBS) が運営する英語ニュース・サイト『Thai PBS World』より、同メディア独自分析を交えた現地情報を翻訳・編集してお伝えする。

貸付利率1%、返済期間15年「所得補償ローン」導入も

学生ローン基金(SLF)は、学生が教育資金として借りた3,370億バーツ(約1兆2,827億9,335万円)のローンを償却するよう求める要求を退けている。

 

この数週間、何千人もの人々が学生ローンの返済を免除するよう求めている。この運動は、「#SLFdebtforgiveness」というハッシュタグのもとに行われ、「借金を帳消しにすることで社会的不平等と戦い、生活を改善しようとする人々の努力を支援するものだ」と主張している。しかし、誰もがこの主張に納得しているわけではない。

 

SLFのマネージャーであるチャイナロン・カチャパナン氏は、「借金を免除しても、人々が教育を受ける機会の改善にはなりません」と述べている。「それどころか、SLFが提供できる機会を若い世代から奪ってしまうことになるのです」。

SLFとは

1990年代半ばの閣議決定で設立されたSLFは、資金繰りに苦しむ高校生、専門学校生、大学生を対象に融資を開始した。貸付利率は1%、返済期間は15年と長期に渡る。このように、SLFは教育によって将来の可能性を広げようとする若者たちに希望を与えていた。

 

その後、政府は2012年に月収が1万6,000バーツ(約6万円)になったら返済を開始する「所得補償ローン」を別途導入したが、SLFはその後も融資を継続し、繁栄していった。

 

今日、SLFは学生資金貸付法に基づき、財務大臣の監督下にある独立した法人として運営されている。現在では、資金繰りに苦しむ学生、Aグレードの学生、国の発展に欠かせない分野や人材不足の分野に関心を持つ学生に融資することが主な任務となっている。

 

SLFは自立型基金と位置づけられており、2018年度以降、国からの追加資金がなくても運営できるようになった。新たな融資は、過去の融資の返済によって賄われている。

 

SLFはこれまでに620万人の学生に融資を行い、そのうち160万人が返済を完了している。現在は、学位取得者345万人に返済を催促している状況だ。残りの約100万人はまだ勉強中なので、返済を始める必要はない。

債務者との争い

記録によると、SLFの融資先で返済が滞ったのは200万人にのぼるという。SLFは時々、法廷に出頭する必要がないよう、債務者に再交渉を持ちかけている。しかし、債務者が義務を無視した際には、SLFから度々裁判を起こすこともある。

 

たとえば、ある新卒の男性は、何度も返済を滞らせた結果、SLFへの借金が30万バーツ以上(約114万円以上)に膨れ上がってしまった。300万バーツ以上(約1,142万円以上)のマンションを没収される事態となって、初めて返済に応じた。

 

中には、SLFが雇用主に連絡を取り、債務者の給与から毎月の支払いを差し引かなければならないケースもある。

債務者からの過大な要求

そんななか、多くの奨学生が「返済の必要はない」と言うようになった。彼らの主張は、「政府は最初から無料で教育を提供すべきだったのだから、彼らの負債は肩代わりすべきだ」というものだ。また、パンデミックによって経済的に苦境に立たされている人々にも譲歩すべきだ、と主張している。

 

現在、何千人もの債務者が失業や給与減額に遭い、返済が滞っていると言われている。

政府とSLFの反応

「支払わなければ国の財政が破綻し、若い世代の誠実さ、責任感、金銭感覚が損なわれる」と主張し、政府とSLFは国民に返済するよう要求している。

 

当局(Thai PBS World)としては、SLFはできる限り柔軟に対応すべきと考えている。

 

パンデミックの危機を受け、SLFは債務者にさまざまな優遇策を講じている。たとえば、一度も返済が滞ったことのない人には、金利を年1%からわずか0.01%に引き下げた。また、一括返済に応じれば、元金を5%割り引くというサービスも行っている。

 

さらに、返済が滞っている人たちにも、シンプルな方法を提供している。返済期間を2倍の30年にするか、65歳になるまでのどちらか早いほうにすればいいのだ。

 

編集:Thai PBS World 総合デスク

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    著者紹介

    連載タイの公共放送局が運営する英語ニュース・サイトより、現地独自の情報を翻訳してお届け

    この記事は、GGOが提携するタイのメディア『Thai PBS World』が2022年8月23日に掲載した記事「To write off or not to write off: Two sides of student loan repayment battle」を翻訳・編集したものです。

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