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ネットにつながればリスクが増大する
■世界各国のサイバー戦能力比較
ロシアの大手セキュリティベンダー「ゼクリオン・アナリティックス」によると、各国のサイバー軍の総合力は、1位・米国、2位・中国、3位・英国、4位・ロシア、5位・ドイツ、6位・北朝鮮、7位・フランス、8位・韓国、9位・イスラエル、10位・ポーランドである。日本は北朝鮮より下の11位。
また、英国の国際戦略研究所(IISS)のサイバー戦能力に関する分析によると、米国が断トツの一等国で、二等国が中国、ロシア、英国、イスラエルなどで、三等国が日本、インド、北朝鮮などである。残念ながら、これが現実である。
パイプラインへの攻撃が示す通り、一等国の米国でさえサイバー攻撃を完全に防ぐことは難しい。その米国と比べてはるかに劣る、日本の課題はあまりに多い。
かつて、オバマ政権は米軍を中心とした国家ぐるみのサイバー攻撃対処の体制構築を検討したことがあるが、最終的には民主主義国家にはそぐわないとの理由で導入を見送っている。その代わり、国のサイバーセキュリティは国防省(DoD)、とくに国家安全保障局(NSA)、国土安全保障省(DHS)、米軍、各省、民間会社がそれぞれの責任で対処することになった。
2015年にはDoDの統合軍であるサイバーコマンド(CYBERCOM)のなかに強力な権限をもつ「サイバー任務部隊」が設置された。複数の専門チームに分かれ、13チームで構成される「国家任務チーム」(重大な結果をもたらすサイバー攻撃からの米国および国益の防衛)、68チームからなる「サイバー防護チーム」(DoDのネットワークとシステムの防護)など、133チームがそれぞれの担当をもっている。総勢6200人体制で、有事の際にはNSAやDHSと連携して対処する実動部隊の位置付けだ。
こうした米国の取り組みは、日本にとっていいお手本になる。DHSはテロの防止や国境の警備と管理、防災・災害対策などを一手にになう巨大官庁で、このような組織は日本にはない。DHSを参考にして、安全保障を含むサイバーセキュリティを所掌する官庁を設けることが必要だ。
同時に自衛隊に「国家任務チーム」を置いて、各種インフラへのサイバー攻撃に対処させる任務と権限を与えることだ。イメージは災害派遣で、防衛産業や電力、通信などの事業者への攻撃に対する調査と防御能力を付与し、有事の際には地震や豪雨に見舞われた地域での活動のように、一元的に対処させればよい。もちろん隊員の確保が課題だが、当面は2000人程度で十分だろう。
また、陸・海・空・宇宙での戦いとは異なり、サイバー空間では巨額の予算を必要としない。専門知識と技術をもった練度の高い隊員と、その活動を支える一定程度のスペックを備えたハードウェアと最先端のソフトウェアがあればこと足りる。
法整備も不可欠だ。「通信の秘密」を保証する、憲法第二一条第二項をはじめ、電気通信事業法、有線電気通信法、電波法などの細かな規定によって、自衛隊は日常的な情報収集さえままならない状態だ。法の縛りはあまりに異様で、仮に防衛省が解放軍からサイバー攻撃を受けても、自衛隊は敵部隊のコンピュータシステムやサーバーへの侵入が許されない。
■サイバー空間における将来のリスク
多くのものがインターネットに接続すればするほど、リスクが増大する。
例えば自動車、とくに自動運転機能が付加された自動車だ。中国の巨大IT企業「テンセント」の子会社「キーン・セキュリティ・ラボ(KSL)」は2016年に数ヶ月間、テスラ車の脆弱性を発見するための実験をおこなってきた。その結果、同年9月にテスラ車(モデルS)に対するハッキングによる遠隔攻撃に成功したと発表した。ドアと窓の遠隔操作、さらに走行中のテスラ車にブレーキをかけることにも成功したという。KSLは2017年7月にも、モデルSの別の弱点を利用してハッキングに成功したと発表している。
悪意ある者のハッキングに対して自動車企業も防護措置を取るであろうが、運転の自動化が進み、インターネットに多くの機能が連結されるとハッキングリスクが高くなる。悪意あるハッキングに対する最強の解決策は「クラシックカーに戻ること」だというブラックジョークがあるが、一理はある。
一方、軍事のジェット戦闘機や海軍艦艇のシステムのハッキングは可能であろうか。
元NATO軍最高司令官ジェームス・スタヴリディス大将の著書『2034』(翻訳は『2034 米中戦争』〔熊谷千寿訳 二見文庫〕)は、米中核戦争を扱った小説であり、米国では10万部以上のベストセラーになっている。
『2034』では、米海軍の艦艇37隻が中国海軍に撃沈され、米本土の重要インフラに対する大規模なサイバー攻撃を受ける。米国はその報復として、中国の湛江市に戦術核攻撃をおこなうというストーリーだが、重要インフラに対する大規模なサイバー攻撃というシナリオは現実離れしている。
さらに『2034』は、サイバー攻撃を過剰に評価している。
例えば、米国のF―35のシステムがハッキングされ、完全に遠隔操縦されるという場面がある。くわえて、中国海軍が米海軍艦艇のシステムにサイバー攻撃をかけてダウンさせてしまう場面が出てくるが、戦闘機や艦艇のシステム全体をサイバー攻撃でダウンさせることは、小説の空想としては面白いが、米軍の対抗手段を考えると現実的でないという専門家が多い。
渡部 悦和
前・富士通システム統合研究所安全保障研究所長
元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー
元陸上自衛隊東部方面総監
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