美しいこだわりのマンションを建築したAさん
Aさんは相続した資産30億円をもつ典型的な地主です。収入の大半が家賃収入であるため、時間にゆとりがあって庭づくりを趣味としています。
現在保有している不動産のすべては親世代が入手したものであり、現代的な感覚をもつAさんとしては、その団地のような作りに不満を抱いていました。古い設備と旧態依然とした間取りが、たびたび空室が発生する原因だと考えたのです。
そこでAさんは、銀行から借入れをして土地を購入し、自分が企画したマンションを建築することにしました。
都内の人気エリアの土地が購入できたため、単身向けの1Kと1LDKを中心とした間取りの3階建マンションにしました。先進的でファッショナブルな若者層にも人気が出るように趣味の知識も活かして、周囲には美しい植栽を行い、無機質な印象が出ないようにエントランスには小規模な滝となる流水装置も設置しています。
この結果、美しい植栽に囲まれたこの物件は非常に人気が出て、若者を中心に入居者に困ることはありませんでした。大家として様子を見に訪れた際には入居者から挨拶されるなど、Aさんとしてはたいへん満足度の高いマンションになりました。
しかし、この美しい自慢のマンションが結果としてAさんを非常に苦しめることになります。
自慢のマンションから一変…思いもよらぬ悲劇
数年後、親世代から引き継いだ物件の建替が相次いで発生して大きな資金が必要になったAさんは、このマンションを売却することにしましたが、美しい植栽と流水装置の維持費が難点となり、なかなか買い手が見つからなかったのです。
美しい植栽や流水装置は、入居者を集める要因にはなっていましたが、維持にかなりの費用がかかっていました。庭づくりが趣味のAさんにとって、それらの維持費は物件の魅力を向上させる必要経費でしたが、投資用の不動産を求める買い手にとってはやっかいな固定費を生む代物だったのです。
また、建築した当時には万人受けする最先端のデザインでしたが、それから10年近くが経過した今となっては、少し時代遅れなセンスになってしまった感も否めず、費用対効果としては合わなくなってしまいました。
結果として、Aさんは植栽と流水装置を撤去することでようやく買い手を見つけることができました。入居者にとっては物件の魅力を大きく損ない、Aさんにとっては大きな追加費用を必要とする改装でしたが、買い手が付かなければ仕方がありません。
売る人間・住む人間と買う人間の間で 「良い物件」 の意味が大きく異なる事例でした。
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