全世帯のわずか2.5%…日本の「富裕層」の実情
意外に思われるかもしれませんが、「富裕層」について、正式な定義はありません。この言葉を使うにあたって政府や官公庁が定める基準は存在しないのです。一般的には、辞書で示されるような「財産が多くあって、生活がゆたかな」(精選版日本国語大辞典)人々という大まかなイメージで使われています。
この富裕層の動態を把握するため、シンクタンクである野村総合研究所は指標を設け、推計を定期的に発表しています。
この調査では、「富裕層」を純金融資産保有額(世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いたもの)1億円以上5億円未満の世帯と定義しています。さらに、それ以上の純金融資産をもつ世帯は「超富裕層」とされています。
富裕層と超富裕層を合わせた世帯数は2019年の推計で132万7000世帯です[図表1]。この数は、同年の日本の総世帯数5178万5千世帯の約2.5%に過ぎません。
この富裕層・超富裕層の世帯数は第二次安倍内閣が発足した2012年以降、増え続けてきました[図表2]。2011年は81万世帯だったのが2019年には132万7000世帯となり、約1.6倍に増加しています。
8年で約2.2倍に…膨張する富裕層の資産
富裕層・超富裕層の数が増加した要因は、2010年代に資産を増やすチャンスが豊富に存在したことです。[図表2]によれば、超富裕層の純金融資産保有額は、2011年の44兆円から2019年の97兆円に増加しています。
また超富裕層の世帯数が増加していることから、富裕層から超富裕層に転じた人も多くいると考えられます。2012年から2018年の「アベノミクス景気」と呼ばれる期間には規制緩和により国内の経済が上向きになり、日経平均株価は大幅に値上がりしました。
また緩和マネーがスタートアップビジネスなどへの投資を促進させ、多くのベンチャー企業が上場や売却により多くの資産を手にし、オーナーや株主は富裕層・超富裕層となりました。
世界経済も2008年のリーマンショックや2009年のギリシャ危機の影響で底を打った以降は上昇局面に入りました。IT企業の規模拡大や中国や途上国の経済成長が著しかった時期です。海外株式に関連した金融商品や海外の事業・不動産へ直接投資を行った富裕層・超富裕層は多額のリターンを得ることができました。
さらにIoT技術の進展により暗号資産やNFTなど新しくかつ価格変動の激しい投機対象も生まれ、資産が少ない人でも暴落時のリスクをうまく回避すれば大きな利益を得られるチャンスも増えました。
2020年からは新型コロナウイルス感染症の流行による経済へのダメージを抑えるために各国が大規模な金融緩和政策を行いました。
この結果、金融商品や不動産、金や芸術作品、高級品などにも投資マネーが流れ込み高値を更新し続けています。そのためこれらを保有する富裕層の資産は増加しています。各国は金融の引き締めを始めていますが、まだまだ株価やその他資産の価値は高く保たれています。
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