借入を避けない、短い期間で返済しない
富裕層が不動産投資を行う場合は、融資を最大限に活用することも重要なポイントの一つです。
手元資金が潤沢な富裕層の場合、借入をせず不動産を現金で一括購入することが多くあります。
この場合、利子を支払わなくてよい分だけ収益性は上がりますが多額の手元資金が消えてしまい、家賃収入で投資資金を回収するまでに長い時間がかかります。
投資において重要なことは、富裕層への信用を活用して資産にレバレッジをかけることにもありますが、もう1点重要なことがあります。
可能な限り長期の借入を行うことで、手元になるべく多くの現金を残すことです。そしてキャッシュフロー効率の良い運用を続けていくことが大切です。
キャッシュフローとは、手元の現金の流れのことです。「キャッシュ」は手元の現金を指し、キャッシュフローは現金が入出金する流れを指します。出金ばかりが多く入金が少ない状態、つまりキャッシュフローが悪い状態になれば、手元の現金が不足して自身の支払いが果たせない状態に陥ります。会社でいえば黒字倒産です。
融資期間を短く設定したFさん
Fさんは中小企業経営者の夫をもつ専業主婦でした。65歳で夫と死別してからは、夫の遺した遺産と年金で暮らしています。2人の娘がいてそれぞれ別の家庭に嫁いでいますが、Fさんは夫の遺産を自分が老後に使い切ってしまうのではなく、娘にできる限り残してあげたいと考えました。
Fさんが資産家の友人に相談したところ、中古の賃貸住宅を購入し、その家賃で生活するといいとアドバイスを受けました。夫の遺産を不動産に替えておけば、娘たちの相続税負担も軽くなるといいます。
Fさんは税理士にも相談のうえ、2人の娘が区分ごとに遺産を分割できるよう中古のアパート一棟を購入しました。夫が経営していた会社のメインバンクに相談して、購入には融資を利用しましたが、娘に負債を残さないように返済は10年と短期間に設定しました。
Fさんは賃貸収入のすべてと生活費の一部を拠出して返済に励むようになりました。借入期間を短く設定したために、賃料収入よりも返済額が上回ってしまい、キャッシュフローが悪化した状態に陥ったのです。
その結果、2人の娘に資産を多く残すことはできそうですが、手元の現金が不足しがちで生活は苦しくなってしまいました。返済への不安から友人との付き合いや趣味の旅行に十分にお金を使うことができません。Fさんの生活は以前と比べてひきこもりがちになってしまいました。
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