「賃貸暮らしで十分」と思っていたが…元・大企業幹部の男性、遺産相続のシミュレーション結果に愕然 (※写真はイメージです/PIXTA)

大企業勤めの男性は、病気をきっかけに早期退職し、いまは自営業でのんびり働いています。自宅はずっと賃貸住まいで、財産は金融資産のみですが、来たるべき相続を考えてシミュレーションしたところ、驚くべき結果となりました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

大企業幹部の男性、病気をきっかけに早期退職

今回の相談者は、60代の遠藤さんです。自分自身の相続について不安があるとのことで、筆者のもとを訪れました。

 

60代の遠藤さんは自営業をしており、妻と社会人の子どもがひとりいます。かつてはだれもが名前を知る大手企業の管理職で、若いときから大きなプロジェクトをいくつも成功させてきました。しかし、50代後半となり、仕事はある程度やり切ったと感じたことから、早期退職し、独立しました。かつての勤め先からも仕事を受注するなど関係は円満で、仕事も安定しています。

 

遠藤さんの退職・独立のきっかけは、病気の発覚でした。幸い発見が早く手術可能だったため、数週間の療養期間を経て、後遺症もなく復帰できました。

 

「会社に戻ると、私が不在の間、部下たちはしっかり仕事を進めてくれていました。たった数週間なのに、すっかり頼もしくなっていましてね。それで退職を決断したのです」

 

部下たちの成長ぶりと、還暦が見えてきた自身の年齢から、遠藤さんはマイペースで働く方向へとシフトしました。

「一生涯賃貸暮らし」で大丈夫なのか?

遠藤さんが勤務していた会社は福利厚生が充実しており、従業員には社宅が用意されていました。一定の年齢になって社宅を出てからは、会社が法人契約した借り上げ住宅に住み替えました。住み替え先の戸建て住宅は、遠藤さんの家族が気に入って選んだ住宅で、それを会社に借り上げてもらったのです。退職後は個人契約に切り換え、いまもそこに住んでいます。

 

「今の時代、60代なんてまだ若いのかもしれませんが、病気を経験したことで、自分なきあとの家族の生活について考えるようになりました。じつは、いちばん迷っているのは自宅についてでして…」

 

住み慣れた家ですが、賃貸物件である以上、今後もずっと家賃が必要です。果たしてこのままで大丈夫なのかと思うようになったといいます。

 

遠藤さんの財産は、すべてが現金と有価証券で構成されており、不動産はありません。しかも、基礎控除の4,200万円を大きく上回っているため、相続税の課税は確実です。

 

それに加え、このままではずっと家賃が必要です。同じ場所にずっと暮らせるなら、これまで培ってきた信頼関係もあり、問題ないかもしれませんが、もし別の賃貸住宅に借り換えることになれば、年齢を重ねるほどハードルが上がります。

 

筆者と税理士は、遠藤さんとの打ち合わせの席でシミュレーションを行い、多額の現金があるのなら、自宅を購入した方がいいと提案しました。

 

人生100年時代、60代前半の遠藤さんご夫婦なら、これから先15年、20年と、自宅で暮らすことになるでしょう。自宅不動産を購入するだけで、評価が購入価格の半分以下に下がり、居住用の小規模宅地等の特例が使えるようになります。現金のままにしておくより確実に節税になりますし、老後の住まいの不安も解消できます。

60代夫婦…選ぶべきは戸建てか、マンションか

遠藤さんが暮らしている賃貸住宅は一戸建てで、子どもが小学生のときから暮らしています。しかし、子どもも成長して社会人となり、いまは夫婦2人暮らしです。

 

「これから自宅を購入する場合、これまでと同じ一戸建てがいいのか、それともマンションがいいのか…。どうなのでしょう?」

 

悩む遠藤さんですが、60代の夫婦の住まいの場合、今後は庭の手入れも負担になり、2階の部屋の使用頻度が下がるのが一般的です。そのことから、駅近の分譲マンションの優先順位が高いと判断できます。

妻への贈与で、さらなる節税効果も

遠藤さんは自分で自宅を購入するべく検討していますが、配偶者には2,000万円まで住宅取得資金を贈与しても贈与税がかからない特例があります(国税庁HP「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」)。それを活用し、2人の共有名義として購入すれば、さらに節税になることも説明しました。

 

「住宅購入についていろいろなアドバイスがもらえたので、妻と相談して早めに購入したいと思います」

 

遠藤さんはそのようにいうと、笑顔でお帰りになりました。

 

金融資産だけという財産構成は、シンプルで楽に思えますが、金額がそのまま相続税の課税評価額となり、特例も使えないため、負担が重くなりがちです。そのことからも、自宅だけでも不動産は持ったほうがよいといえます。

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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    株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 
    相続対策専門士

    京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。

    著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。

    ◆相続対策専門士とは?◆

    公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

    「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

    著者紹介

    連載相続のプロが解説!人生100年時代「生前対策」のアドバイス事例

    本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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