サイバー空間では仁義なき戦いが
■民主主義国家も敵になる場合がある
日本を攻撃するのは、中朝のような“敵性国家”ばかりとは限らない。『サイバーアンダーグラウンド』(吉野次郎著 日経BP刊)によれば、フランスの「対外治安総局(DGSE)」に属するサイバー部隊は、他国の自動車産業や製薬メーカーへのハッキングで産業機密を盗み出し、自国企業に提供しているという。
これが事実なら、フランス政府がトヨタやホンダの技術を盗み出し、ルノーやプジョーを支援していることになる。同書では、あまりの節操のなさにDGSEが世界の諜報機関から“西側の中国”と揶揄されているとも指摘している。
まさに「仁義なき戦い」だ。第一次世界大戦の終結後に「今後の英国の敵は?」と問われたウィンストン・チャーチル首相は「我が大英帝国以外のすべての国だ」と答えた。ときを超えて、電脳の世界にもまさにこの言葉があてはまる。
ランサムウェア攻撃に対しては国際的な連携が不可欠である。とくに民主主義対専制主義の対立の時代においては、少なくとも民主主義陣営内での団結と協力が不可欠だ。
しかし、最近のデンマーク・ラジオによると、デンマーク情報機関(FE)は、米国の国家安全保障局(NSA)と協力し、ドイツ、フランス、スウェーデン、ノルウェー各国の政府首脳の情報を集めていたという。民主主義諸国間のサイバー空間での仁義なき戦いがなされている事実は問題である。この問題も含めて米国には適切な行動を求めたい。
渡部 悦和
前・富士通システム統合研究所安全保障研究所長
元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー
元陸上自衛隊東部方面総監
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