還暦から筋トレを始めた城アラキ氏が著書『負けない筋トレ 還暦から筋トレにハマったら、「肉体」と「人生」が激変した!』(ブックマン社)で解説します。

何事も大事なのは「本気の決意」

アメリカの筋トレ雑誌『マッスル・アンド・フィットネス』で下半身トレーニングを「蛙を飲む」と比喩しているのを読んで「その気持ちわかる!」と、思わずうなずいてしまった。多分あなたも筋トレを経験したことがあれば同じだろう。

 

下半身のトレーニング=大臀筋や大腿四頭筋、ハムストリングスなどは、体のなかでも大きな筋肉で酸素消費量も多いから呼吸が苦しく息が上がる。加えて扱う重量もデッドリフトに次いで重い。セメント袋を担いで全力疾走するようなもんだ。油断すると、まさに蛙を飲んだかのように「オエッ」と吐きそうになる。

 

ホントに飲んだことはないけど。

 

挙上する最も重い重量から始め、セットごとに重さを下げていくトレーニングを「ディセンディング・セット法」という。つまり、その日最初の1発目がいちばん重くいちばん苦しいわけだ。でもこの「蛙」を飲まなきゃ1週間が始まらない。

 

そんな思いまでしてなぜ筋トレなのか──。

 

私がなぜ還暦を過ぎて筋トレに熱中したか。まずは本連載のきっかけから。「最近、何か凝ってます?」と長い付き合いの編集者に訊かれたことだ。昔からお調子者でそのときどきに凝っていることに、思いっきりのめり込む性格だと私のことをよく知っている。

 

「最近は筋トレ」
「じゃあそれで。時節柄、特に中高年は体の免疫力アップが必要ですし。城さんなら3ヵ月もあれば原稿上がるでしょ」

 

と、古今東西、編集者は書き手の都合など一切考えない。「早い、安い、(そこそこ)上手い」がウリだった雑誌ライター時代からの長い付き合いだから、遠慮も容赦もない。で、私をチラリと見て言う。

 

「でもねぇ、もう少し著者の体が絞れてないと読者への説得力が薄いですよね。そうだ。どうですシックスパックとか。連載の書き始めから書き終わるまでの3ヵ月でシックスパックにするということで」

 

ライザップのテレビCM以来、世間の人はシックスパックなんて簡単だと誤解している。馬鹿を言ってはいけません。ライザップに出る芸能人さんはシックスパックに体を絞るのがお仕事。

 

とはいえ、こんな機会がなきゃ腹を割ることもないかもしれないしなぁ。と、著者をその気にさせるのも編集者の腕前ではある。だったらその話、乗ってやろうじゃない。

 

そう、腹は割れるものではない。割るものなのだ。さて、長らくオヤジの馬鹿話に付き合ってくれたあなた。ここまではいわば準備体操のウォームアップ。

 

次からが本気です。漫画家・ジョージ秋山先生も言っている。

 

「散歩のついでに富士山を登った人はいない。登ろうと決意したやつだけが登ったんだ」

 

大事なのは本気の決意──。

 

城 アラキ
漫画原作家

 

本連載は、城アラキ氏の著書『負けない筋トレ 還暦から筋トレにハマったら、「肉体」と「人生」が激変した!』(ブックマン社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

負けない筋トレ

負けない筋トレ

城 アラキ

ブックマン社

『ソムリエ』『バーテンダー』など、数々のお酒にまつわる傑作漫画の原作を手掛けてきた著者は自他ともに認める酒呑みであり、美食家だ。3日に一度は暴飲暴食。仕事柄、1日の歩数が500歩なんてザラだった。運動もしない日々を…

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