還暦から筋トレを始めた城アラキ氏が著書『負けない筋トレ 還暦から筋トレにハマったら、「肉体」と「人生」が激変した!』(ブックマン社)で解説します。

中高年になると、老化や「死」が身近になってくるが…

■二つの「体力」と「心の体力」

 

世界中が不安と恐怖の黒雲に包まれ、現代文明がいかに脆かったのか、いやでも気づかされた。人類にとってこの戦いは、完全勝利が難しいらしい。長い戦いになりそうだ。となると、できるのは勝つことではなく「負けない」ことかもしれない。

 

今のところ、特に中高年がこれに負けぬには、基礎体力が運命を左右すると言われている。富貴栄華にかかわらず、最後の最後、頼れるのは己の体力だけなのだ。 

 

この体力だが、実は2種類ある。ひとつは「行動体力」。いわゆる筋力や持久力、柔軟姓やバランス能力。もうひとつが「防衛体力」。ストレス抵抗力や免疫力などだ。「防衛体力」は体のなかの働きで、見えないし数値化もしづらい。が、「行動体力」が上昇すると、「防衛体力」も上昇することは知られている。

 

本連載は「だから読者のみなさまもぜひ筋トレを」という趣旨の本ではない(無論、その意図もあるけど)。そういう、ただ健康を目的にしてトレーニング法を説明する本は他にもある。ネットに情報も溢れている。私だって参考にしてきた。

 

しかし、本連載は少々違うのだ。

 

そもそも私は漫画の原作家だ。本気の筋トレ歴も2、3年で、いわば素人である。歳はただ今現在……なんと67歳にもなった。要は、本連載を読んでくれているあなたと同じ中高年で、かつ初心者なのである。

 

しかも筋肉ムキムキの格闘技系漫画ならまだしも、何十年も酒の話ばかりを書いてきたから、自他共に認めるメタボオジサンだった。しかし、だからこそ本連載を書く意味があると思った。ここを強調したい。実は、中高年が筋トレをする最も重要な「意味」について書かれた文章は、過去なかったのだ。その意味とは何か――。

 

体力に「行動体力」と「防衛体力」があると書いたが、中高年だからこそ必要な体力がもうひとつある。いわば「心の体力」というようなものだ。

 

人生の折り返しを過ぎ、かつては遙か彼方に感じられた「死」も眼の前をかすめる。私自身も大腸ガンを経験して、いやでも人生を振り返った。今回の世界的な疫病の蔓延にかかわらず、老化や死さえ少しずつ身近になってくるのが中高年だ。

 

こんなとき、体の体力以上に必要なのが「心の体力」だ。大事なのは人生の後半期、自分自身に真剣に全力で向き合うための心の強さだ。誤魔化さず、偽らず、もう一度自分自身を真正面から見つめ直す謙虚さだ。

 

中高年の筋トレは、そんな力も養ってくれる。その意味で、本連載は「読む筋トレ」でもある。読んで「心の体力」も鍛えられる。

 

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本連載は、城アラキ氏の著書『負けない筋トレ 還暦から筋トレにハマったら、「肉体」と「人生」が激変した!』(ブックマン社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

負けない筋トレ

負けない筋トレ

城 アラキ

ブックマン社

『ソムリエ』『バーテンダー』など、数々のお酒にまつわる傑作漫画の原作を手掛けてきた著者は自他ともに認める酒呑みであり、美食家だ。3日に一度は暴飲暴食。仕事柄、1日の歩数が500歩なんてザラだった。運動もしない日々を…

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