リフォームの基本になるのは「費用対効果」の視点
本連載では、リフォーム理論編として、利益の最大化を目的としたリフォーム(改修工事)の方法についてお伝えします。リフォームはアパート経営における支出の大きな位置を占めますので、この支出をどのようにコントロールするかが、アパート事業の成否を決めることにもなります。
リフォームを行うに当たって、すべての基本となる考え方が、費用対効果の視点ですが、そもそもリフォームを行う目的は次の2点に集約されます。
①歩留率(成約率)の向上
②資産価値の維持・向上
①の歩留率(成約率)とは、先述の通り「案内した入居希望者に、いかに申し込んでもらうか?」ということになります。案内数だけ増えても、入居希望者に気に入られなければ空室は埋まりません。当たり前ですが、リフォームのされていない部屋を見てもらっても、よほどのことがない限り申し込みには至りません。
かといって、とにかくリフォームされていればよいかというと、残念ながらそれも違います。現在の大空室時代においては、リフォームしたところで、そこに何の工夫もなければ入居希望者は見向きもしません。
工夫とは、例えばクロスや設備は流行りのものを使うとか、色調を考えるといったことです。小さなところでは、室内の臭いなども歩留率を下げる要因となります。実際にリフォーム後、数カ月経った室内は下水の臭いが充満している場合が珍しくないのです。
「あの部屋はリフォームしたから大丈夫」と安易に考えると、大きな機会損失を招くことにもなるでしょう。そのため、リフォームやクリーニング方法に気を付けるのはもちろんのこと、リフォーム後の室内の状態にも、十分気を付けることが重要です。
室内以外、エントランス等の共用部の状態も入居希望者は気にします。これからの数年間を過ごすわけですから、「楽しく暮らせるかな」「変な人は住んでいないかな」等と、入居希望者は想像以上に細かいチェックをしています。逆に言えば、そういった細かな点に気を付けることで、他の物件に勝つこともできるでしょう。
また、室内にスリッパや芳香剤等を置き、入居希望者に気持ち良く内覧してもらうことも重要で、当社ではリフォーム終了時に工事施工会社が設置するようになっています。
物件の運用方針によってリフォームの内容も変わる
②の資産価値の維持・向上も重要になります。アパート事業という視点に立てば当たり前のことですが、常に物件を高く売れる状態に保つことが基本となります。
基本的には賃料収入によって物件の価値が決まりますので、賃料を確保することが大切です。アパート事業の前提は決して「売却」することではなく「保有」にあるわけですが、いつ売却してもよいような備えをしておくことは大切です。
ただし例外もあります。それは、数年後に取り壊す前提で物件を運用している場合です。たった数年間物件を保有するために、高額な工事費用をかけて修繕するのが得策ではないのは明らかでしょう。
物件の運用方針によって行うべきリフォームの内容が変わってくるということです。