記憶するために集中力は必須の能力
それでは、集中力という能力自体に目を向けて、これをいかに伸ばすかですが、ここでも記憶能力が非常に密接に関わってきます。私自身は、記憶能力とは、ほぼ集中力とさえ考えています。というのも、何かを記憶するためには集中力は必須の能力だからです。集中力が働いていない状態で何かを記憶するというのは、ほぼ不可能です。
一口に記憶といいますが、この記憶についても心理学的な定義が存在します。
「記銘(覚える)」→「保持(覚えておく)」→「想起(思い出す)」という3つの工程を経て、はじめて記憶とよぶことができるのです。テキストをただ眺めているだけでは内容を覚えられない、何も意識せずに人と会うだけでは名前を覚えられないというのは、記憶のための工程があるからです。
何かを覚えるためには、「これを覚えよう」という意志を持たなければならないということです。意志を持つことで、はじめて脳の記憶のスイッチが入るのです。そして、その意志とは何かといえば、ずばり集中力なのです。
また記憶競技の話で恐縮ですが、種目の中に、1時間でできる限り円周率のようなランダムな数字を記憶する競技があります。問題用紙にずらっと並んでいる数字を1時間掛けて覚えます。続いて覚えた数字を再現する解答の時間になりますが、その時間が2時間です。要するに、3時間連続で脳を使い続けることになります。こうなると、もはや記憶能力というよりも集中力の勝負なのです。
当然私も、最初からこれほどの集中力を持っていたわけではありません。この競技のトレーニングを続けることによって、だんだんと覚えられる量が増えました。それに比例して、3時間もの集中力も同時に身に付けることができたというわけです。
集中力は測ることが難しいですが、記憶能力は覚えた量がわかるので、定量的に能力がアップしたことがわかります。記憶できた量が、間接的に集中力のバロメーターとなってくれるというわけです。したがって、「記憶能力=イメージ力」の方程式と合わせて、「集中力=記憶能力=イメージ力」とも表せることになります。
イメージ力がアップすれば、記憶能力もアップし、記憶能力がアップすることで、さらにイメージ力もアップするというサイクルでした。ここで述べたように、記憶能力と集中力が結び付いているのなら、イメージ力を上げて記憶能力を上げることが、集中力をも向上させることにつながっているのも、理解できるのではないでしょうか。
そして、皆さんも感じ始めているかもしれませんが、このアップした集中力は、ビジネスの場面で要求されるさまざまな能力を高めるための触媒にもなりうるのです。
池田 義博
記憶力日本選手権大会最多優勝者(6回)
世界記憶力グランドマスター
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