前回は、不動産賃貸業の「オーナー」として持つべき心構えについて説明しました。今回は、自分の所有する土地に「賃貸用建物」を建てる際の注意点を見ていきます。

業者に言われるまま賃貸用建物を建てる人は多いが・・・

とある記事に次のようなことが書いてありました。

 

「ハウスメーカーに賃貸用建物を建てることを勧められ、建てたはいいけれど、まったく人が入らない。でも借入金の返済があるので、自分の給料から毎月返済にあてている。相続税対策なんてしなければよかった」

 

相続税対策で不動産賃貸業を始めた方への取材記事ですが、気の毒にも業者の勧めるままに物件を建て、多額の借入金を作ってしまう人が増えているというのです。

 

資産家と呼ばれる方々は、多くの場合、土地を所有しています。そして一人ひとりが、自分の土地に愛着を感じているものです。そこが生まれ育った場所だったり、住んでいる期間が長かったりすれば、なおさらその土地を守りたいと思うでしょう。

 

そんなとき、さまざまな業者が「お持ちの土地に、賃貸用建物を建てませんか」と提案してきます。「何もしなくても現金がたまっていきますよ」「相続税対策になりますよ」という殺し文句とともに。

所有地活用の際は「必ず売却できるか」を考える

しかし厳しいようですが、土地と一言でいっても、不動産賃貸業に向いている土地と向いていない土地があります。一等地とされている場所でも、駅から遠かったり、地形がよくなかったり。そのような土地に賃貸用建物を建てると、失敗する可能性が高くなります。

 

よくある失敗は、入居者がいないことです。頑張って建てたのに住む人がいなければ、借入金が残るばかりです。

 

そしてもう1つ大きな失敗は、売却したいときにできないことです。「新築のうちはそれなりに入居者が入ったけれど、建物が古くなるにつれ入居者が減った。売ってしまいたいけれど、売れない」とか、「やっと売れたはいいけれど、二束三文にしかならなかった」という話をよく耳にします。

 

実際に街なかを歩いていると「この建物、今は新築だからいいけど、10年後には売れないだろうな・・・」と感じる物件をよく見かけます。相続税対策でそのような賃貸用建物を建ててしまった場合でも、最終的に現金が残って納税できればいいのですが、それも難しいとなるとお手上げです。

 

このような落とし穴にはまらないためにも、土地に関しては冷静に、そして極めて慎重であってほしいと思います。

 

自身の所有する土地の上に賃貸用建物を建設するとしても、必ず「売却できるかどうか」を見据えた計画を立ててください。実際に売却するかどうかはその後の経済状況などから考えてもいいわけですが、もしさまざまな角度から検討し、1つでも売却に引っかかる要素があれば、そのリスクを負ってでも購入すべきがどうかを考え、その計画を見直す必要があります。

 

また、考え方を柔軟にすることも大切です。先祖代々の土地を所有している方の中には、何があっても土地を手放したくないという方がいらっしゃいます。

 

気持ちはわかりますが、もしそれが使っていない、あるいは持っていても利用できない土地であれば、建物を建てるなどの活用は考えずに、売却するのも1つの方法です。無理に活用しようとしないほうがいいでしょう。

 

どのような選択をする場合でも、業者ではなく税理士などの客観的な判断ができる第三者の意見も聞きつつ、複数の角度から検討することが大切です。

本連載は、2013年11月27日刊行の書籍『大増税時代に大損しない相続税対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

大増税時代に大損しない 相続税対策

大増税時代に大損しない 相続税対策

北村 英寿

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税対策を成功させるためには、実行に移してからの最終的な「出口戦略」まで考える必要があります。 「出口戦略」とは、相続税対策のために購入した賃貸不動産の最終的な顛末を考えることです。 相続発生後は、基本的にそ…

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