不動産賃貸業は「サービス業」であることを忘れない
筆者が土地活用に関する相談を受けた場合は、相続税額を試算し、不動産賃貸業を行ったほうがいいと判断すればお勧めしますし、必要ないと思えばお勧めしません。もちろんご本人がご希望される場合は、さまざまな条件を検討して合理的であれば不動産賃貸業に着手していきます。
連載「大増税時代に大損しない『不動産を活用した相続税対策』」でも述べたように、不動産を探すときは、ともに信頼できるチームの担当者に連絡をし、現時点で満室稼働している物件をいくつか見つけてもらいます。そこから顧客の希望の地域や規模などにもっとも近い物件を見つけ、提案していきます。
前回は物件の売却をお勧めしましたが、せっかくこのようにして手に入れた優良物件であれば、自分がオーナーとしての仕事を覚えて、ずっとやっていきたいという方がいらっしゃらないとも限りません。
そういったご意向がある方のために、実際にオーナーがどのようなことをすべきかをお伝えしたいと思います。
私どものチームで物件を見つけ、銀行との借入交渉などを進め、決済をしたら、もう賃貸不動産のオーナーです。基本的には保証会社と管理会社に管理や運営を一任します。何もしなくても家賃が収入として入ってきますし、借入金の返済も引き落とされていきます。
しかし1件のマンションなりアパートなりのオーナーになったのですから、自分の不動産をケアする心がけは持ちたいものです。「行ってもすることがないから」と放置するのではなく、せめて1カ月に1回は自分の不動産を見回りに行き、内部や周辺地域で変わったことはないか確認しましょう。
掃除は清掃業者に任せますが、たとえば玄関にゴミが落ちていたら拾う、空き部屋のポストにチラシがたまっていたら捨てるといった気遣いは欲しいものです。
たまたま内見に来た人がチラシのたまったポストを見てしまったら、「ここに住みたい」とは思いにくいでしょう。オーナーはゴミすら拾わないことを知ったら、住人にとっていい気分はしないはずです。
今は、「オーナーだから偉いだろう」とふんぞりかえってはいられない時代です。たとえ相続税対策で所有することになったとはいえ、不動産賃貸業はサービス業であることを忘れてはいけません。
オーナーの中には、内見時に「エアコン新設しますよ」とか、「トイレを温水洗浄便座にしますから、ぜひ入ってください」などと、何か1つ要望を聞いてあげるという方もいます。八百屋が「今日は大根をおまけしてあげるね」とサービスして客をつなぎとめるのと同じです。そこまでのサービスはできなくても、顧客に対するその姿勢は見習うべきものがあります。
家賃滞納などのトラブルに向き合う「覚悟」はあるか?
ここまでは比較的対応しやすいところかと思います。一番問題となるのは、入居者トラブルです。
賃貸不動産にはさまざまな人が入居しますから、問題が発生しやすい環境ともいえます。そこで起こるトラブルの中でもオーナーとしてもっとも厄介なのが、入居しているけれど家賃を払ってくれない人です。
本来、保証会社が審査をし、それに通った人だけが入居しているはずです。しかし昨今では保証会社が続々倒産しています。入居時には保証料を払ってもらえたけれど、現在はそうもいかないということがあります。
そういう一筋縄ではいかないトラブルが発生した場合、最終的に矢面に立たされることはオーナーとして覚悟しなければなりません。オーナー判断で対応する必要があるのです。
不動産賃貸業のオーナーとしてもっとも問われるのは、このようなトラブルの場合に対応する覚悟や責任かもしれません。それさえあれば、あとは真摯に不動産と向き合っていけば問題ないと思います。