前回は、顧問税理士では対応し切れなかった「相続対策」について取り上げました。今回は、国税局のOB税理士は本当に税のエキスパートなのかを考察します。

国税庁OBでも「幅広い税の知識」があるとは限らない

相続税を熟知した税理士を探すには、正しい見分け方が必要です。

 

世の中にはさまざまな税理士がおり、それぞれが自己アピールし、「法人税が得意です」「所得税ならお任せください」と看板を掲げています。不得意なものを強調することはありませんから、何をプッシュしているかを見てみることは、1つの参考情報になるとは思います。

 

しかし参考にする中で気をつけていただきたいのは「国税庁OBだから、税のエキスパートです」という謳い文句。

 

確かに、以前国税庁に勤務していたなら税金のことは一通りわかっている方も多いでしょうし、課税する側の視点を知っているという意味では優れた面もあるでしょう。

 

ただし、国税庁の業務はそれこそ法人税、資産税、所得税と部門別にはっきりと分かれている「縦割り」体制です。課税する立場としてはそれでいいのですが、相続税対策を行う立場としては不十分です。

 

相続税対策において大切なのは、全体の納税額の把握です。「相続税は下がったけれど、所得税が上がってしまった」では本末転倒です。相続税を下げ、同時にほかの税金を上げないためには、相続税を中心とした幅広い税の知識が必要です。

「税務署に顔が利く」というのは誤解

そうはいっても「国税庁OBの税理士なら、人によっては厳しいのかもしれないが、基本的には税務署に顔が利くだろうから、いざというときにそのツテを使って何とかしてくれるだろう」――、どこかで頼りに思ってしまう方がいらっしゃると思います。判断材料が少ない場合には、その肩書が説得力として機能してしまうのは、ある程度仕方のないことかもしれません。

 

しかしご存知でしょうか。数年前、元国税局長が退職後に税理士を開業し、その後巨額の脱税容疑で逮捕されました。わずか数年間で何億もの所得を隠し、脱税したのです。

 

元局長ですから、国税局にいるあいだは相当な権力を持っていたはずです。あまりに大胆な脱税をやってのけた背景には、おそらくその権力を持って無理を通すことができると思い込んでいたのだと推察します。本人も、まさか自分が逮捕されるとは思っていなかったことでしょう。

 

かつては、泣く子も黙る国税局長の権力で、税金をごまかせたことがあったのかもしれません。しかしもはや、そんな時代ではないのです。私たちも、「国税庁OBに任せれば何でも大丈夫」「いざとなれば何とかしてくれる」、そんな考えを改めなければなりません。「税理士だから」「国税庁OBだから」、そんな「薄っぺらな看板」だけを頼りに、将来を左右する相続税対策を任せてはいけないのです。

 

本連載は、2013年11月27日刊行の書籍『大増税時代に大損しない相続税対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

大増税時代に大損しない 相続税対策

大増税時代に大損しない 相続税対策

北村 英寿

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税対策を成功させるためには、実行に移してからの最終的な「出口戦略」まで考える必要があります。 「出口戦略」とは、相続税対策のために購入した賃貸不動産の最終的な顛末を考えることです。 相続発生後は、基本的にそ…

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