前回に引き続き、顧問税理士では対応し切れなかった「相続対策」の相談事例を見ていきます。今回は、税理士の得意分野について取り上げます。

税理士も税目によって「得意・不得意」がある

前回の続きです。

 

結局、Aさんは顧問税理士に相談するのはやめて、私とともに「土地の無償返還に関する届出」を提出し、相続を乗り切りました。

 

もしあの日Aさんと出会えなければ、Aさんは「土地の無償返還に関する届出」を提出しないままでいたことでしょう。届出を提出していれば土地の評価額は20%減額されるのですが、それもできないまま、払わなくていいはずの税金を払ってしまったはずです。

 

Aさんのケースは、氷山の一角だと思います。顧問税理士に相談し対策をとったつもりでも、それがまったく対策になっていないケースはごまんとあります。

 

無理もないことです。一般の方の目には、税理士は当然「税に詳しい人」として映ります。たとえその税理士が、税目によっては生半可な知識しかなくても、傍目にはわかるはずがありません。それを思うと、私はいつもやるせない気持ちになるのです。

 

皆さんにぜひ知っておいていただきたいのは、税理士にもさまざまな人がいるということです。

 

法人の確定申告を主な業務としている人なら法人税に詳しいでしょうし、個人の資産家の方の顧問税理士であれば所得税に精通しているかと思います。しかし、それ以外の分野はどうでしょうか。つまり、税理士にも得意分野と不得意分野があるのです。

相続税対策まで手がける顧問税理士は多くはない

多くの顧問税理士の主な仕事といえば、法人の帳簿付けと確定申告であり、相続税対策まで手を伸ばして積極的に関わる方はそう多くありません。

 

私のところへ相談にいらっしゃる方々からも、「顧問の先生にも相続税対策を相談したけれど、なかなか着手してくれない」とか、「何度となくお願いしても、はっきりした返事がない」と聞きます。

 

おそらく、相続税対策を手がけたことがない、あるいは知識がなく対応できないのだろうと思います。とはいえ、顧問契約をしている間柄でははっきり断ることができないため、明確な回答を避けているのではないでしょうか。

 

税理士とはいえ、皆が相続税の実務をこなせるわけではないと知っておかなければ、意識ばかりが先行して実際の相続税対策は進まない、そんな事態も起こり得るのです。相続税対策の依頼をするときには、こういった事実を頭の片隅に入れておいてください。

本連載は、2013年11月27日刊行の書籍『大増税時代に大損しない相続税対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

大増税時代に大損しない 相続税対策

大増税時代に大損しない 相続税対策

北村 英寿

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税対策を成功させるためには、実行に移してからの最終的な「出口戦略」まで考える必要があります。 「出口戦略」とは、相続税対策のために購入した賃貸不動産の最終的な顛末を考えることです。 相続発生後は、基本的にそ…

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