土地ごとに付随する「細かな条件」が評価を左右
相続案件に不慣れな税理士は、「時価」に悩みます。
相続税対策を行うときは、まず被相続人の財産の価値を割り出しますが、原則として、財産は時価で計算します。時価とは「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に、通常成立すると認められる価格」のことですが、これを知らないことには相続税対策は始まりません。
不動産の時価は数種の考え方があります。たとえば、全国的に価格が統一されていることを「一物一価」といい、条件によって価格が変わることを「一物三価」などといいますが、土地は公示地価、基準地価、路線価、固定資産税評価の「一物四価」です。ここに実際に売買されるときの市場価格を入れると「一物五価」になります。
とはいえ、税理士によって財産の計算方法に違いがあってはいけませんから、相続時に使用する財産評価の基準は、国税庁の「財産評価基本通達」というマニュアルで規定されています。
土地の場合は路線価方式あるいは倍率方式と決められていますが、路線価で計算するとしてもその土地ごとに細かな条件が付随してきますから、それだけで事足りるわけはなく、税理士が判断をして評価額を算出します。それゆえ、10人の税理士がいれば10通りの評価額が出ることもあります。相続に不慣れな税理士は、ここが悩むポイントにもなるでしょう。
土地ごとの問題を無視して相続税評価を算出すると…
たとえば、路線価評価で1億円になる土地があったとします。これは何の問題もない真四角の土地であればそのまま1億円の評価額でよいかもしれませんが、世の中にそのような土地は多くありません。
平均的な奥行きに比べ、短いもしくは長いこともあれば、正面の幅である間口が狭いこともあります。ときには宅地として使用できないがけ地などの斜面もあります。このようなことに該当する土地があれば、細かく数字を補正できるようになっていますので、それを採用するかどうかで評価額は変動します。
今挙げたのは代表的なものですが、その他にも土地にはチェックするべきところが相当数あります。場合によっては不動産鑑定士などの土地評価の専門家に依頼しますが、こういった土地の実情を知らなければ、依頼することもままならないかもしれません。
以上のようなことをまったく考慮せずに相続税評価額を算出すれば、必要以上の相続税を支払う危険性があります。時価のように、相続税対策に不可欠なものに対して正しい知識を持ち、適正な評価額を算出する手段をとれる、そのような税理士でなければまともな節税は難しいと考えたほうがいいでしょう。