(写真はイメージです/PIXTA)

賃貸トラブルには様々なものがありますが、そのひとつが「賃借人から賃料減額を求められる」というケースです。 賃料減額を求められたら、どのような手続きが行われるのでしょうか。賃料の減額を求める手段として、裁判手続きを利用する場合としない場合があります。また、交渉や調停などで争っている期間中の賃料も問題になってきます。不動産法務に詳しいAuthense法律事務所の森田 雅也弁護士が解説します。

交渉や調停などで争っている期間中の賃料

次に、交渉や調停などで争っている間の賃料についてご説明します。

 

賃借人が賃貸人に 対して賃料の減額を求めてきた場合、賃貸人は「賃料を下げる必要はない」として争うことになるかと思います。

 

賃貸人と賃借人の間で賃料の額について争いがある場合、先に説明した通り、交渉や民事調停などを行うこととなりますが、 このような交渉や民事調停などは、通常、一定期間にわたって行われ、すぐに終了するものではありません。

 

ではこの期間中、賃貸人は賃借人に対して、従来通りの賃料の支払いを請求することができるのでしょうか。

 

従来通りの賃料の支払いを請求することは可能

借地借家法32条3項本文には、「建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払いを請求することができる」と規定しています。このように、賃料の減額請求を受けた賃貸人は、「相当と認める額」が今まで通りの賃料であると考えれば、その額の支払いを請求できます。

 

賃借人が減額請求した賃料しか支払わなかった場合

これに対し、賃借人が「減額請求した賃料が適正な賃料である」として従来通りの賃料を支払わなくなった 場合、賃貸人はどのような手段をとることができるのでしょうか。

 

このような場合、賃貸人は、賃借人が減額請求した賃料を支払ったとしても、相当と認める賃料の支払額に不足しているとして、賃借人の債務不履行を理由に、賃貸借契約を解除することが考えられます。

 

東京地裁平成6年10月20日判決も、賃借人が、賃貸人に対して、賃料減額請求をした上で自己の主張する額の賃料の支払いを継続している状況で、賃貸人が賃料不払いを理由に賃貸借契約を解除した場合、解除は有効であるとしています。

 

もっとも、東京地裁平成9年10月29日判決は、減額した支払賃料は相当賃料額よりは少ないが、その不足分の合計額が相当賃料額の3分の1に満たないとして解除の効力を否定しています。

 

したがって、賃借人が減額請求した賃料の額と賃貸人が相当と考える賃料の額の差額が僅かである場合は、賃料不払いを理由とした賃貸借契約の解除が認められない可能性があるので、注意が必要となります。

 

賃借人に差額を返還する必要があるか

では、裁判で認定された正当な賃料の額より、賃借人が支払っていた賃料の額の方が高額であった場合、 賃貸人は、賃借人に対して、差額を返還する必要があるのでしょうか。

 

この点について、借地借家法32条3項ただし書は「ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。」と規定しています。

 

このように、賃借人が実際に支払った額が正当とされた賃料の額を超過していた場合、賃貸人は、超過額に年一割の利息を付けて返還をしなければなりませんので、注意が必要となります。

 

まとめ

賃料減額を求められた場合、手段として、裁判手続きを利用する場合としない場合があります。また、交渉や調停などで争っている期間中の賃料についても考えなくてはいけません。

 

賃借人が実際に支払った額が正当とされた賃料の額を超過していた場合、賃貸人は、超過額に年一割の利息を付けて返還をしなければならなくなります。このような事態にならないよう、賃料減額を求められたときは、不動産に詳しい弁護士に一度ご相談されることをおすすめします。

 

 

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