賃借人からの賃料減額請求の手段と手続きの流れ
賃借人から賃料減額を求められた場合、どのような手続きが行われるのでしょうか。賃借人が賃貸人に賃料の減額を求めてくるのにはどういった手段が考えられるのか、裁判になることはあるのかについて説明します。
賃料の減額を求める権利
まず、借地借家法32条1項は、賃借人が賃貸人に対して賃料の減額を求める権利を規定しています。 この請求権は「形成権」といって、将来の賃料を適正な額に変更させる効果を持ちます。
賃借人が賃料の減額請求権の行使をすると、もし、その賃料が「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下、その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となった」と認められた場合に、将来に向かって賃料を適正な額に変更する効果が生じます。
賃料の減額を求める手段は、大きく2つに分けられます。
■裁判手続きを利用しない場合
1つ目は、裁判手続きを利用せずに、任意での交渉を賃借人から求められる場合です。当事者間において任意で行われるものであるため、基本的には口頭や書面など、手段や方法は問われません。
■裁判手続きを利用する場合
2つ目は、裁判手続きを利用して減額を求められる場合です。裁判手続きとしては、調停や訴訟が考えられます。
しかし、賃料の減額を裁判所に申し立てる場合には、原則として簡易裁判所に調停の申し立てをしなければなりません。そのため、賃借人がいきなり賃料の減額を求める訴訟を提起しても、この訴訟を受理した裁判所は原則として事件を調停に回します。
調停で行われること
調停では、裁判官に加えて、調停委員という民間の有識者から選ばれた第三者を交えながら、当事者で話し合いを行います。話し合いがまとまれば、原則としてそこで調書が作成され、合意した賃料が今後の改定賃料となります。もっとも、調停はあくまで話し合いによる解決が前提であるため、賃貸人と賃借人がお互いに譲歩せずに話し合いが決裂した場合には、調停は不成立となります。
交渉が決裂し、調停も不成立となった場合、賃借人は訴訟を提起することになります 。訴訟では、裁判所が指定する不動産鑑定士による鑑定が行われることがあり、この鑑定をもとに、最終的に裁判所が適正賃料を決定します。
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