「軍艦島」の建物は100年以上が経過
■マンション寿命は管理が行き届いていれば100年以上!
マンションの老朽化に伴うさまざまな問題がメディアで取り上げられる機会も増えています。持ち続けるといっても、マンションの寿命はいつまで持つのか。気になりますよね。
減価償却に使われる鉄筋コンクリート造の償却年数は税法上47年と定められていますが、これはマンション寿命とは関係ありません。そもそも、当初は60年に設定されていたものが、税制の改正によって、マンション寿命とは関係なく政策的に短縮されたものです。
ここでは、マンション寿命について、物理的な寿命と、経済的な寿命という2つの視点から考えていきたいと思います。
マンションの物理的な寿命は、コンクリートの耐用年数からわかります。国土交通省がまとめた資料「RC造(コンクリート造)の寿命に係る既往の研究例」のなかで紹介されている資料を参考にすると、100年以上の耐久性があるとされています。
『一般建物の耐用年数は120年、外装仕上げにより延命し耐用年数は150年』(大蔵省主税局)『鉄筋コンクリート造建物の物理的寿命を117年と推定』(飯塚裕「建物の維持管理」鹿島出版会)
実際に建てられてから100年以上が経過しているコンクリート造の住宅が国内にあります。2015年に、世界遺産にも登録された長崎県端島(はしま)、通称「軍艦島」です。
7階建ての30号棟と呼ばれる鉄筋コンクリート造の建物は、大正5年、1916年に建てられた集合住宅です。1974年に炭鉱が閉山されて以降、40年以上もメンテナンスがされずに、潮風にさらされ続けてきましたが、いまだに建物躯体部分は姿をとどめています。
最近では200年の耐久性があるコンクリートが開発されており、今後は技術の進歩によって「物理的耐用年数」は、さらに伸びることが考えられます。
ただ、物理的にマンションの寿命が100年以上見込めるとしても、最後まで稼働し続けて、利益をあげられるかどうかは、また別の話です。軍艦島の住宅にしても、形は保っていますが、あのような状況では、たとえ利便性の高い都内に立地していたとしても、売買することはおろか、賃貸することもできません。これが経済的な寿命が尽きてしまっている状態です。
例えば、同じ築年数が経過したコンクリート造の住宅でも、2013年に取り壊された同潤会「上野下アパートメント」(台東区)は、築84年が経過していましたが、最後まで住まいとして活用されていました。これは建物の管理を継続的に行っていたため、経済的寿命もこれだけ延ばすことができたケースです。