中小企業が生き残るには「価格・品質の追求」では無理
大手企業や海外の製品が市場に出回る状況下で中小企業が生き残りを図るためには、単に「価格と品質を追求する」という正攻法では通用しません。他社にはない独自の技術や商品を開発する必要があります。その努力を怠り、大手企業と同様に価格を下げることで対応しようとした中小規模のメーカーは、いつの間にか価格競争の渦に飲み込まれて消えていきました。中小企業と大手や海外の企業とでは、そもそも資金力に大きな差があるのですから、それは当然の結果です。
大企業はスケールメリットを活かして仕入れ価格を安くすることができます。また設備投資の面でも資金が潤沢にありますので、大規模な工場を人件費の安い国に作ったり人手を最小限におさえられる機械をそろえたりすることによって、生産コストも下げることができます。
しかし中小企業の場合、このような大手と同様の対応をするのは困難です。にもかかわらず大手や海外企業と同等の価格を実現しようとするなら、あとは品質面で妥協するしかありません。
例えば生地の価格を下げようと思ったら生地を織るのに使う糸を国産から海外産のものに代えたり、使う糸の本数を間引いたりといった方法で製造コストを下げていくことになります。
海外製の安い糸というのは国産の厳しく管理されて製造される糸よりも、どうしても異物が入っている率が高くなります。また、糸の本数が少ないということは生地の目が粗くなります。タオルが分かりやすい例ですが、糸が間引かれた生地では薄くなり吸水量が少なくなるなど機能性が低くなります。
このように単に「価格を下げること」が目的になってしまうと、自ずと商品の質は下がります。価格の面ですでに不利なのに加えて商品の質は下がったのでは、ますます勝負できるはずがありません。
さらに、中小企業の場合は知名度の点でも不利です。会社や商品のことを広く知ってもらうにはテレビCMや新聞広告などを出すという方法がありますが、これには多額の広告料がかかります。その割に売上に反映される率は低いので、体力のない会社はマスメディアに頻繁に広告を出すことはできません。特に地方の中小企業にとって、大企業と張り合えるほどに知名度を上げるのは並たいていのことではありません。
機能面ではまったく同じ商品がふたつ並んでいて価格もほぼ同じであれば、多くの人は名の通った企業の商品を選ぶはずです。際立った個性のない商品の場合、どんなに品質にこだわって丁寧に作り続けていたとしても大手企業には太刀打ちできないということになります。
そんななか中小企業が生き残る方法としては大手企業からの仕事を受けて、サプライチェーンの一部となるという方法もあります。大手との取引をしている間は定期的にまとまった収入が約束されるので、経営は一見安定するように思えます。
しかし、その仕事には「いつ消えてなくなるか分からない」というリスクがつきまといます。実際に私たちの会社も大手企業から受けていた仕事が、トラブルによって急遽なくなるという経験をしたことがありますし、担当者が代わったタイミングで取引が中止になったこともありました。他社への依存度が高いということは、何かのきっかけで一気に経営が苦しくなる可能性が高いということでもあります。
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